四三

文字数 941文字


 時間は過ぎて夕方、話は別の場所に移動していた。鴇は会社の帰りに早坂家に寄った。
 そして、リビングで貢とリンダの二人と向かい合わせに鴇が座って、テーブルを囲んだ。話はすでに始まっていた。
「鴇君。またうちの子が、あなたのお子さんにご迷惑をかけて、ごめんなさい」
「いいんだよ、リンダ。その方があいつのためにもなる。それにしても、海里ちゃんもなかなかやるな」
「もう、鴇君たら…」
「貢、お前も俺と同じ考えなんだろう」
「ああ、そうだな」
「あなたまで…」
「リンダ、俺たちもそんな時があったな。誰もが一度は通る道なんだよ」
「貢、そう言えば、あたしもダディと喧嘩をして、家を飛び出して、あなたの家に行ったことがあったね」
「そうさ。俺たち親は子供を信じて見守ってあげなければならない時があるんだ。お前のダディと同じようにな」
「そうだったね…」
「ところで鴇、俺に何か話があったんだろ?」
「ああ、そうだった。この間、お前の所に佐藤芽衣子さんって方が訪ねに来ただろう」
「ああ…。実は、俺が小学校の頃に親が離婚したことがあって、その人は俺を産んだ実のお袋なんだ」
「そうか知ってたのか。その人のご主人さんは俺の父親なんだ。俺は捨て子だったのは知っているだろう。実は俺は父親の顔を知らないんだ。昔なら憎んでいたかもしれないが、今はもし会えるのだったら、是非、会いたいんだ」
「鴇、会えるとしたら、お前のお母さんは大丈夫なのか?」
「ああ、お袋もわかってくれたよ。それに俺たちは血のつながりはなかったにしても、兄弟の縁には触れていたようだ」
「じゃあ、お前…いや、鴇お兄さんというわけだな」
「いいや、鴇でいいよ。それに、なんかお前に言われると気持ち悪い。それよりも、俺たちには血の繋がった弟がいたんだ。名前は佐藤守君。俺たちのチームに新しく入ったメンバーだ。更に、その佐藤守君は北川家に縁している。つまり、北川先生とは親戚になるんだ。それは俺たちも北川先生の親戚であることを意味している」
「お前が言いたいことは、川合家と早坂家も北川先生の親戚と言いたいんだな」
「ちょっと難しいことはわからないが、まあ、そういうことだ」
「鴇君、それってなんかいいね」と、リンダが言ったところで、一旦この話は締め括ろう。次の話が待っている。



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