三五

文字数 1,160文字


 夕陽の空にはまだ程遠く夏空が広がる放課後、わたし、北川瑞希は演劇部が集う体育館に着いた。
 演劇部の部員は五人。インストラクターが一人。顧問が一人の七名で結成式を迎える。
 この面々は、全員、一度はあの職員室で顔を会わしているので自己紹介は省けると思うが整理はしよう。
 ここに集ったメンバーに、わたしが考えた役割分担を、次の条々で説明した。
 北川瑞希・顧問。平田孝夫・インストラクター。出門恭平・部長。平田伊都子、早坂海斗・大道具及び演出担当。川合未来、早坂海里・脚本担当。以上、各担当に関しては一段落とする。配役及び演技に関しては二段落とする。
 音響は現在、吹奏楽部・顧問の出門先生に早坂先生が相談中と段取り中。
 劇は太陽の伝説と決まった。八月二十四日のふるさと祭りの後半に予定している。そして、十一月十八日の文化祭にも予定しており、前編と後編で分けるのか、一話完結としていくのかは、この結成式で決めようと思っていた。
「…ということだけど、皆さんに異議はありませんか?」
「異議ありません」と、全員の意見が一致した。
「海里さん、脚本の件ですが、前編と後編に分けますか?一話完結としていきますか?」
「一話完結でいきたいです。そのふるさと祭りに来られる方は生徒さんだけではないでしょうから」
「海里さんの言う通りだと思います。この劇を見られるお客様は生徒だけとは限りません。それに次に同じ人が見られるとも限りません。でも、その分、劇の仕上がりまでの期間が短くなりますが、それでも大丈夫ですか?」
「はい。未来君が一緒でしたら大丈夫です」
「海里、俺で本当に大丈夫なのか?」
「うん。未来君だからお願いしたいの」
「わかりました。未来君、海里さんのこと頼みましたよ」
「はい」
「劇は一話完結としていきますが、皆さんに異議はありませんか?」
 ここでもまた「異議ありません」と、全員の意見が一致した。
「では、また来週の九日の日から、稽古を再開します。場所は知新館の一階の畳の部屋を使わせて頂きます。時期が来ましたら場所を変えると思いますので宜しくお願いします。以上、今日の結成式は終了します。」
 二〇一五年七月三日。ここに演劇部は正式に再結成した。九日からの活動再開を夢見て、メンバーたちは解散した。
 そして今、この場所に残っているのは、わたしと海里さんと未来君と海斗君の四人だった。
「じゃあ、海里さん。帰りましょうか?」と、わたしは海里さんに声をかけた。
「はい。…ところで未来君と海斗は一緒に帰る?」
「先に瑞希先生と帰っといてくれ。俺は海斗と打ち合わせしてから帰るよ」
「うん、わかった」と、海里さんは言ってから、わたしの方に顔を向けた。
「海里さん、行きましょうか」
「はい」
 わたしと海里さんは、体育館を離れてメゾンタウンに向かって歩き出した。



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