加茂倉少年の恋 其の八

文字数 854文字

 部屋に俊介君の声が響き渡った後、私たちは彼を見つめたまま固まったように動かず、部屋はシン……と静まり返った。


 そんな中、私は彼の言った言葉を頭の中で整理する。




 えーと?




 廃病院で会った二人はどちらも男の子だったはず……。





 そしてその片方の子の名前が啓太くん。





 さらに俊介君の言った言葉から判断すると……





 啓太くんは俊介くんの事が好きで、告白したって事よね。






 つまり……





「恋に性別なんて関係ないと思うのっ!」
 拝むように両手をパンッと重ね合わせ、私は結論づける。
「つまり、少年よ大志を抱けってことだね?」
「それ意味違うってっ」
 グッジョブ! と親指を立てる宗近くんに私は突っ込む。
 栄慶さんはまだ無言で俊介くんを見ていた。
「あ……あの……」
「俊介くんっ、恋する気持ちは誰にだってあるものよ? それが同性であっても同じことなの」
「え、あの……」
「それを受け入れるかどうかは俊介くん次第だけど、彼の気持ちは理解してあげて?」
「そうそう、ボーイズビーアンビシャ~スっ!」
「だからそれ違うってっ」
「あ、あのっ、違いますっ! 俺も啓太も普通に女の子が好きですからっ!!
「――へ?」
「あいつが俺のこと好きだなんて絶対に思ってませんからっ!!
 俊介くんは身体を乗り出す様にして座卓に両手をつき、必死に首を左右に振る。
「えーと? じゃあ、さっき言ったのは?」
 啓太くんに告白されたのよね? と確認すると、俊介くんはコクンと頷き座り直す。
「俺の事を好きって言ったのは啓太です。でも告白は啓太だけど女の子です」
「啓太くん? 女の子??」
「あの、つまりですね……ええと……」





「憑依されたのか」
 言いよどむ俊介くんの代わりに、沈黙を守っていた栄慶さんが静かに口を開いた。
「え!?
「あーそう言う事かぁ~」
(つまり……)




 啓太くんに憑依した女の子が告白してきたって事!?
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登場人物紹介

室世癒見【むろせゆみ】24歳 

主人公

憑かれやすい女性編集者

永見栄慶【ながみえいけい】27歳

御祓いを得意とするインテリ坊主

壮真貴一朗【そうまきいちろう】43歳

ナルシストタイプな敏腕編集長

匡木圭吾【まさきけいご】

第二章登場人物

洋食亭サン・フイユ現オーナー

間柴一【ましばはじめ】 38歳

第三章登場人物

ガイスト編集部カメラマン

一条史真【いちじょうししん】27歳

第四章登場人物

宗國寺副住職

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