加茂倉少年の恋 其の十二
文字数 1,596文字
声はワントーン上げているのか中性的な声質で、身長は俊介くんよりも少し低いくらいだろうか。
見た目は……どちらかというと美少女と呼ばれる部類の女の子に見える。
(確か……)
廃病院で出会った二人の少年のうち、一人は柔道とかのスポーツをしてそうなガタイのいい男の子で、もう一人は……あまり印象には残ってないけど、髪型がボブスタイルの気の弱そうな男の子だったはず。
「この子が啓太くんなの?」
念のため俊介くんに確認する。
「えーと……、はい。そう……です」
彼は引き腰の状態で顔を確認し、頷く。
という事は、エリナちゃんは気の弱そうな男の子の方に憑依したのね。
「あ、でも髪が……」
「うふふっ、ウィッグ買ったの。似合う?」
エリナちゃんは顔を傾け、感想を求める。
その仕草が何とも可愛らしい。
「え? あっ……えっと……」
そんな積極的な彼女とは裏腹に、俊介くんは抱き着かれ至近距離で見つめられてるせいか、動揺し困った表情を浮かべながら言葉を詰まらせる。
それを否定だと捉えたのか、エリナちゃんは悲しそうな表情を浮かべたかと思うと俊介くんから目を逸らし
「あたし……髪、なかったから……。長い方が良かったんだけど……似合わない……かな……」
と、先ほどの勢いとは打って変わり、自信なさげにポツリと呟いた。
そんな彼女の様子を見て、私はハッとする。
(もしかして、薬で髪が……)
エリナちゃんは病気で亡くなったと俊介くんは言っていた。
化学療法は薬によって髪が抜け落ちることがある。
エリナちゃんもそうだったのではないだろうか。
そう考えると……同じ女として胸が痛んだ。
「そ、そんなことないよっ! エリナちゃんの長い髪、似合ってるよね?」
俊介くんは女の子とどう接すればいいのか分からないだけ、そう思った私は、彼をサポートするように声を掛けると……
「う、うんっ、凄くっ凄く似合ってるっ! か、可愛いよっ!!」
と、俊介くんは早口で彼女に伝えた。
「俊くん……」
その同情ではない正直な気持ちが伝わったのか、エリナちゃんはパッと明るい表情に戻ると数歩後ろへ下がり、長い髪をなびかせながらクルクルと回り始めた。
それを嬉しそうに見つめる俊介くん。
そんな初々しい二人の姿を可愛いなぁ……と思いながら私は見守る。
(髪かぁ……)
そういえば私も伸ばしていた時期があったっけ……。
小学生の頃は腰上ぐらいまであった髪も、中学に上がってからは短く切るようになり、今は肩あたりで切り揃えるようになった。
今の髪型が自分には合ってると思うけど……エリナちゃんを見ていると長い髪もいいなぁと思ってしまう。
(でも今更伸ばすのも……ねぇ)
横髪を少しつまみながらそんな事を考えていると……。
「伸ばせばいいんじゃないか?」
「え?」
顔に出てしまったのだろうか……栄慶さんはそう言うと、私がつまんだ髪とは反対側の髪に指を絡ませ持ち上げる。
その時微かに指先が耳を掠め、私はピクリと体を震わせてしまう。
「にっ、似合わないですよっ」
感じてしまった事を知られたくなくて、私はぶっきらぼうに答える。
そんな私を見て栄慶さんは目を細めると
「そんなことはない、きっと似合うはずだ」
と、優しい笑みを浮かべた。
「――っ」
私は赤くなった顔を見られたくなくて、彼から顔を背ける。
(そ、そんな風に断定づけられると困るじゃない……)
伸ばしてみようかなって、思っちゃうじゃないっ。
(ま、まぁ……美容院代節約の為に伸ばすのもいいかもねっ)
(そ、それにこれからの季節、うなじに風が当たると寒いしっ)
――なんて理由を考えながらチラリと様子を窺うと、絡めた髪にキスするかのように顔を近づける彼の姿が目に入り、私は慌ててうつむいた。
見た目は……どちらかというと美少女と呼ばれる部類の女の子に見える。
(確か……)
廃病院で出会った二人の少年のうち、一人は柔道とかのスポーツをしてそうなガタイのいい男の子で、もう一人は……あまり印象には残ってないけど、髪型がボブスタイルの気の弱そうな男の子だったはず。
「この子が啓太くんなの?」
念のため俊介くんに確認する。
「えーと……、はい。そう……です」
彼は引き腰の状態で顔を確認し、頷く。
という事は、エリナちゃんは気の弱そうな男の子の方に憑依したのね。
「あ、でも髪が……」
「うふふっ、ウィッグ買ったの。似合う?」
エリナちゃんは顔を傾け、感想を求める。
その仕草が何とも可愛らしい。
「え? あっ……えっと……」
そんな積極的な彼女とは裏腹に、俊介くんは抱き着かれ至近距離で見つめられてるせいか、動揺し困った表情を浮かべながら言葉を詰まらせる。
それを否定だと捉えたのか、エリナちゃんは悲しそうな表情を浮かべたかと思うと俊介くんから目を逸らし
「あたし……髪、なかったから……。長い方が良かったんだけど……似合わない……かな……」
と、先ほどの勢いとは打って変わり、自信なさげにポツリと呟いた。
そんな彼女の様子を見て、私はハッとする。
(もしかして、薬で髪が……)
エリナちゃんは病気で亡くなったと俊介くんは言っていた。
化学療法は薬によって髪が抜け落ちることがある。
エリナちゃんもそうだったのではないだろうか。
そう考えると……同じ女として胸が痛んだ。
「そ、そんなことないよっ! エリナちゃんの長い髪、似合ってるよね?」
俊介くんは女の子とどう接すればいいのか分からないだけ、そう思った私は、彼をサポートするように声を掛けると……
「う、うんっ、凄くっ凄く似合ってるっ! か、可愛いよっ!!」
と、俊介くんは早口で彼女に伝えた。
「俊くん……」
その同情ではない正直な気持ちが伝わったのか、エリナちゃんはパッと明るい表情に戻ると数歩後ろへ下がり、長い髪をなびかせながらクルクルと回り始めた。
それを嬉しそうに見つめる俊介くん。
そんな初々しい二人の姿を可愛いなぁ……と思いながら私は見守る。
(髪かぁ……)
そういえば私も伸ばしていた時期があったっけ……。
小学生の頃は腰上ぐらいまであった髪も、中学に上がってからは短く切るようになり、今は肩あたりで切り揃えるようになった。
今の髪型が自分には合ってると思うけど……エリナちゃんを見ていると長い髪もいいなぁと思ってしまう。
(でも今更伸ばすのも……ねぇ)
横髪を少しつまみながらそんな事を考えていると……。
「伸ばせばいいんじゃないか?」
「え?」
顔に出てしまったのだろうか……栄慶さんはそう言うと、私がつまんだ髪とは反対側の髪に指を絡ませ持ち上げる。
その時微かに指先が耳を掠め、私はピクリと体を震わせてしまう。
「にっ、似合わないですよっ」
感じてしまった事を知られたくなくて、私はぶっきらぼうに答える。
そんな私を見て栄慶さんは目を細めると
「そんなことはない、きっと似合うはずだ」
と、優しい笑みを浮かべた。
「――っ」
私は赤くなった顔を見られたくなくて、彼から顔を背ける。
(そ、そんな風に断定づけられると困るじゃない……)
伸ばしてみようかなって、思っちゃうじゃないっ。
(ま、まぁ……美容院代節約の為に伸ばすのもいいかもねっ)
(そ、それにこれからの季節、うなじに風が当たると寒いしっ)
――なんて理由を考えながらチラリと様子を窺うと、絡めた髪にキスするかのように顔を近づける彼の姿が目に入り、私は慌ててうつむいた。