インテリ住職 其の一
文字数 1,305文字
ここ、斎堂寺には、日々さまざまな相談事が持ち込まれます。
その中でも特に多いのが、除霊や浄霊など、御祓いに関する相談事です。
「ありがとぅございましたぁ~、これでもぅ怖い思いしなくてすみますぅ~」
とあるお店のNo.1キャバ嬢だという彼女は、ここ最近、気味の悪い声が聞こえたり、金縛りにあったりと奇妙な現象に悩まされていたのだという。
栄慶さん曰く、No.1になれずに無念の死を遂げた霊が嫉妬し、取り憑いていたらしい。
「また何かあったらぁ~よろしくお願いしますぅ~」
そう言って彼女は上目遣いの笑みを向けると、ピンク色の封筒と、源氏名らしき名前が入った名刺を栄慶さんに渡し帰っていった。
「相変わらずおモテになるようで~」
彼女の姿が見えなくなったのを確認すると、私はからかうように声を掛ける。
すると栄慶さんは
「捨てておけ」
と、握りつぶした名刺をポイと投げてきた。
「えっ、ちょっと!」
思わず両手でキャッチし、中を確認してみると、名刺には
♡♡♡お店以外でのサービスOKデス♡♡♡
という大量のハート付の文字と共に、プライベート用の連絡先だと思われる番号が書き添えられていた。
(皆、外見に騙されすぎ!)
スラリとした長身、思わずウットリしてしまう程のバリトンボイス。栄慶さんはどこぞの御曹司かと思われるような風貌をしている。
さらに切れ長で少し吊り上った目は、眼鏡を掛ける事でより知的な印象を醸 し出し、ただ一つ欠点だと言えるはずの 〝髪がない〟という事に関しても、袈裟を纏 い凛とした雰囲気を漂わせる事で逆に女性達を惹きつける要因となっているようだ。
「はぁ……」
斎堂寺のインテリ美形住職、そんな彼の本性を知っている私は、小さく溜息を零し動向を伺う。
「ほう、さすがNo.1キャバ嬢、布施の額もなかなかだ」
栄慶さんは薄っすらと笑みを浮かべながら、10枚以上ありそうな諭吉を、ひぃ、ふぅ、みぃ…と数えていた。
(……守銭奴)
「その守銭奴に何か用か?」
心の中で呟いたつもりが声に出てしまったらしい。彼は振り向き意地の悪い笑みを浮かべる。
(うう……)
その表情に居心地の悪さを感じながら、私は持っていた紙袋をおずおずと彼に差し出した。
「これが今日、祓ってもらう分です……」
「ああ」
栄慶さんはそれを受け取ると 、中を確認し始める。
「あと……これも一緒にお願いできればな~~と……」
続けて自分の右肩を指差すが、彼は 〝そこ〟には目もくれず、私の顔を凝視し
「
と、淡々と答え、紙袋の中から【御布施 高羽出版社】と書かれた白い封筒を取り出し、ピラピラと目の前に見せつけてきた。
(ううう…)
「さて、二択だ。《金を払う》か《身体で払う》か、選べ」
栄慶さんはいつものようにニヤリと笑みを浮かべながら私に選択肢を与える。
そして私もまた、いつものように彼から目を逸らし
「かっ、身体で……払います……」
と、小声で答えた。
その中でも特に多いのが、除霊や浄霊など、御祓いに関する相談事です。
「ありがとぅございましたぁ~、これでもぅ怖い思いしなくてすみますぅ~」
とあるお店のNo.1キャバ嬢だという彼女は、ここ最近、気味の悪い声が聞こえたり、金縛りにあったりと奇妙な現象に悩まされていたのだという。
栄慶さん曰く、No.1になれずに無念の死を遂げた霊が嫉妬し、取り憑いていたらしい。
「また何かあったらぁ~よろしくお願いしますぅ~」
そう言って彼女は上目遣いの笑みを向けると、ピンク色の封筒と、源氏名らしき名前が入った名刺を栄慶さんに渡し帰っていった。
「相変わらずおモテになるようで~」
彼女の姿が見えなくなったのを確認すると、私はからかうように声を掛ける。
すると栄慶さんは
「捨てておけ」
と、握りつぶした名刺をポイと投げてきた。
「えっ、ちょっと!」
思わず両手でキャッチし、中を確認してみると、名刺には
♡♡♡お店以外でのサービスOKデス♡♡♡
という大量のハート付の文字と共に、プライベート用の連絡先だと思われる番号が書き添えられていた。
(皆、外見に騙されすぎ!)
スラリとした長身、思わずウットリしてしまう程のバリトンボイス。栄慶さんはどこぞの御曹司かと思われるような風貌をしている。
さらに切れ長で少し吊り上った目は、眼鏡を掛ける事でより知的な印象を
「はぁ……」
斎堂寺のインテリ美形住職、そんな彼の本性を知っている私は、小さく溜息を零し動向を伺う。
「ほう、さすがNo.1キャバ嬢、布施の額もなかなかだ」
栄慶さんは薄っすらと笑みを浮かべながら、10枚以上ありそうな諭吉を、ひぃ、ふぅ、みぃ…と数えていた。
(……守銭奴)
「その守銭奴に何か用か?」
心の中で呟いたつもりが声に出てしまったらしい。彼は振り向き意地の悪い笑みを浮かべる。
(うう……)
その表情に居心地の悪さを感じながら、私は持っていた紙袋をおずおずと彼に差し出した。
「これが今日、祓ってもらう分です……」
「ああ」
栄慶さんはそれを受け取ると 、中を確認し始める。
「あと……これも一緒にお願いできればな~~と……」
続けて自分の右肩を指差すが、彼は 〝そこ〟には目もくれず、私の顔を凝視し
「
この分
についての代金は受け取っただが、その分
についてはまだ貰っていないだろう?」と、淡々と答え、紙袋の中から【御布施 高羽出版社】と書かれた白い封筒を取り出し、ピラピラと目の前に見せつけてきた。
(ううう…)
「さて、二択だ。《金を払う》か《身体で払う》か、選べ」
栄慶さんはいつものようにニヤリと笑みを浮かべながら私に選択肢を与える。
そして私もまた、いつものように彼から目を逸らし
「かっ、身体で……払います……」
と、小声で答えた。