親友 其の五
文字数 1,307文字
「あの……斎堂寺の方……ですか?」
このお寺で栄慶さん以外のお坊さんに会ったことがない私は、一応確認の為に聞いてみる。
すると彼は笑みを保ったまま「違います」と顔を横に振って答えた。
「私はここから少し離れた場所に建つ、宗國寺 の副住職をしております、一条 史真 と申します」
「宗國寺……」
って、確か駅向こうの山のふもとに建ってる、結構大きなお寺だったはず。
そんな人がどうしてここに?
そんな疑問に応えるように、一条さんは言葉を続ける。
「急用で住職は夜まで戻られないので、代わりに私が閉門時間までこちらに」
「よろしければ、彼に代わって用件をお伺いしますよ」
(そっか……栄慶さん、夜まで戻らないんだ……)
だけど、さすがに彼に除霊を頼むわけにはいかないよね。
「あの、今日は栄慶さ……永見ご住職にいつもの御祓いをお願いしようと思って寄っただけなので、後日改めてまたお伺いしますっ」
そう言って私は帰ろうと踵を返す。
「……もしや、室世……癒見さんではないですか?」
「え?」
急に私の名前を言い当てられ、思わず振り返る。
「あの、そうです……けど?」
「ああ、やはりそうでしたか!」
「憑かれやすい、
「お、おてんば娘……」
〝憑かれやすい〟だけならまだしも、〝おてんば娘〟って……私もう二十四なのにっ!
栄慶さんってば、私の事そんな風に周りに言ってたの!?
思わず恥ずかしさで赤面していると、一条さんは「そうですか、あなたが……」と口に手を当てクスクスと笑いながらジッと私の顔を見つめてきた。
「な、なんですか?」
栄慶さん、まだ何か言って……。
「ふむ。永見が言っていた通り、可愛いらしいお方だ。彼が守りたくなるのも無理もない」
「かっ、かわっ」
サラリとそんな言葉を使う一条さんに驚愕しつつも……
(い、言ってた通りって、それって……栄慶さんも私の事……か、可愛いってっ)
以前、海で聞き取れなかった彼の言った言葉。
【まぁ……馬鹿な子ほど………というが】
(あれってやっぱり、馬鹿な子ほど可愛いって……可愛いって……可愛いって……)
「――~っ」
『馬鹿な子』という部分は聞かなかったことにして、栄慶さんがその言葉を口にしていた事が嬉しくて、破顔しそうになる顔を両手で抑えながら溢れそうになる笑みをなんとか堪える。
そんな私の姿を見ながらクスクスと笑っていたいた彼が、急に何かを思い出したかのように表情を曇らせた。
「――……。よろしければ、彼が戻ってこられるまで中で待ちませんか?」
「え? で、でも……」
「あと一時間もすれば閉門ですし、そのあと私も自分の寺へ戻らねばなりません」
「ですが…今日は彼を一人にさせたくなくて……」
彼は微笑みながらも、どこか悲しげな表情が見て取れた。
「栄慶さんに……何かあったんですか?」
「――ええ、実は……」
『彼のご友人が亡くなられたのです』
一条さんはそう言って、栄慶さんが走って行った方へと視線を向けた。
このお寺で栄慶さん以外のお坊さんに会ったことがない私は、一応確認の為に聞いてみる。
すると彼は笑みを保ったまま「違います」と顔を横に振って答えた。
「私はここから少し離れた場所に建つ、
「宗國寺……」
って、確か駅向こうの山のふもとに建ってる、結構大きなお寺だったはず。
そんな人がどうしてここに?
そんな疑問に応えるように、一条さんは言葉を続ける。
「急用で住職は夜まで戻られないので、代わりに私が閉門時間までこちらに」
「よろしければ、彼に代わって用件をお伺いしますよ」
(そっか……栄慶さん、夜まで戻らないんだ……)
だけど、さすがに彼に除霊を頼むわけにはいかないよね。
「あの、今日は栄慶さ……永見ご住職にいつもの御祓いをお願いしようと思って寄っただけなので、後日改めてまたお伺いしますっ」
そう言って私は帰ろうと踵を返す。
「……もしや、室世……癒見さんではないですか?」
「え?」
急に私の名前を言い当てられ、思わず振り返る。
「あの、そうです……けど?」
「ああ、やはりそうでしたか!」
「憑かれやすい、
おてんば娘
、さんですよね?」「お、おてんば娘……」
〝憑かれやすい〟だけならまだしも、〝おてんば娘〟って……私もう二十四なのにっ!
栄慶さんってば、私の事そんな風に周りに言ってたの!?
思わず恥ずかしさで赤面していると、一条さんは「そうですか、あなたが……」と口に手を当てクスクスと笑いながらジッと私の顔を見つめてきた。
「な、なんですか?」
栄慶さん、まだ何か言って……。
「ふむ。永見が言っていた通り、可愛いらしいお方だ。彼が守りたくなるのも無理もない」
「かっ、かわっ」
サラリとそんな言葉を使う一条さんに驚愕しつつも……
(い、言ってた通りって、それって……栄慶さんも私の事……か、可愛いってっ)
以前、海で聞き取れなかった彼の言った言葉。
【まぁ……馬鹿な子ほど………というが】
(あれってやっぱり、馬鹿な子ほど可愛いって……可愛いって……可愛いって……)
「――~っ」
『馬鹿な子』という部分は聞かなかったことにして、栄慶さんがその言葉を口にしていた事が嬉しくて、破顔しそうになる顔を両手で抑えながら溢れそうになる笑みをなんとか堪える。
そんな私の姿を見ながらクスクスと笑っていたいた彼が、急に何かを思い出したかのように表情を曇らせた。
「――……。よろしければ、彼が戻ってこられるまで中で待ちませんか?」
「え? で、でも……」
「あと一時間もすれば閉門ですし、そのあと私も自分の寺へ戻らねばなりません」
「ですが…今日は彼を一人にさせたくなくて……」
彼は微笑みながらも、どこか悲しげな表情が見て取れた。
「栄慶さんに……何かあったんですか?」
「――ええ、実は……」
『彼のご友人が亡くなられたのです』
一条さんはそう言って、栄慶さんが走って行った方へと視線を向けた。