Curry du père 其の十六

文字数 566文字

 栄慶さんが私の名前を呼んだだけで、身体が沸騰するように熱くなるのが分かった。



 彼のキスが嬉しかった。



 与えられた熱情に、心が温かく満たされた。




 この気持ちを【好き】以外で表現する事なんて出来ない。




 そうよ、私は……栄慶さんの事……




(初めて会った時から好きだったの……)




 でも認めてしまうのが怖かった。





 受け入れる事ができなかった。





 今までまともな恋なんてしたことがなかったから……





 栄慶さんの……馬鹿。





 今更、遅いんだから。





 散々私の事からかって、意地悪して、面白がってた貴方の前で、今更素直になんてなれないんだからっっ。





(今更好きって言えないんだからっっ)





 栄慶さんの馬鹿――っ!!








 「でも……好きですよ」
 両手で数珠を握りしめながら、私は小声でつぶやく。
 今はまだ素直になれないけど……
 いつか…
 言ってやるんだからっ!
 栄慶さんが困るくらい、言ってやるんだからっっ



「――――、よしっ!」
 私は勢いよく立ち上がり、気合を入れる。この件は終わりっ!
 今は私の出来る事をしなきゃっ!!



 彼から預かった数珠を持って、私は寺を後にした。
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登場人物紹介

室世癒見【むろせゆみ】24歳 

主人公

憑かれやすい女性編集者

永見栄慶【ながみえいけい】27歳

御祓いを得意とするインテリ坊主

壮真貴一朗【そうまきいちろう】43歳

ナルシストタイプな敏腕編集長

匡木圭吾【まさきけいご】

第二章登場人物

洋食亭サン・フイユ現オーナー

間柴一【ましばはじめ】 38歳

第三章登場人物

ガイスト編集部カメラマン

一条史真【いちじょうししん】27歳

第四章登場人物

宗國寺副住職

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