Curry du père 其の十五

文字数 789文字

「んっ……ん……」
 角度を変えて、何度も繰り返される……とろけるような……甘いキス。
 全身の力が抜けそうな感覚に陥ると、腰にまわった彼の腕に力が加わり、引き寄せられる。
 そして心臓の音が聞こえそうなくらい身体を密着させると、彼は唇を離した。
「栄……慶……さん……」
「癒見」
「――!?
「んっ」
 彼は私の名前を呼ぶと、さらに深い口づけを交わし始める。
「んっんっ……」
 こじ開ける様に舌が侵入し、口の中をかき回される。
 彼の熱い舌が私の舌を絡め取り、強く吸われ、電流のようなものが全身を駆け巡る。
「ふっ……んんっっ」
 くぐもった声が漏れてしまう。
 恥ずかしくておかしくなりそうなのに、彼は何度も舌を絡ませ濡れた音を響かせる。
 最後は余韻を味あわせるかのように、唾液の糸を引かせながら舌を引き抜いた。
「はっ……はっ……」
 その光景を目にしながら、私は短い吐息を何度も吐く。
 口から零れた唾液を、彼は人差し指の背で優しく拭ってくれる。
 身体が凄く熱い。ドロドロに溶けてしまいそう……。
 彼はそんな私の耳元に顔を近づけ、痺れるような低い声で囁いた。
「――――――じゃない」
「――っつ」
 彼はニヤリと笑い、何事も無かったかのように本堂に入って扉を閉めた。
「~~~~っっ」
 私はその場にペタリと座り込み、頬に手を当てる。


 鏡で確認しなくても分かる。


 今、私の顔はありえないくらい真っ赤だ。


「なん……なのよ……」
 なんで……そんな思わせぶりな事……言っていくのよ……。








〝あ ま り 私 を 妬 か せ る ん じ ゃ な い〟








 そんな事言われたら期待するじゃないっ。





 そうよ。





 今ならハッキリと分かる。





 私は……




 栄慶さんの事が好きなんだ。
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登場人物紹介

室世癒見【むろせゆみ】24歳 

主人公

憑かれやすい女性編集者

永見栄慶【ながみえいけい】27歳

御祓いを得意とするインテリ坊主

壮真貴一朗【そうまきいちろう】43歳

ナルシストタイプな敏腕編集長

匡木圭吾【まさきけいご】

第二章登場人物

洋食亭サン・フイユ現オーナー

間柴一【ましばはじめ】 38歳

第三章登場人物

ガイスト編集部カメラマン

一条史真【いちじょうししん】27歳

第四章登場人物

宗國寺副住職

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