親友 其の三

文字数 1,051文字

 キスマークって、こんなに消えないものなの!?
 最近は朝が来るたび鏡に映ったそれを見ては、あんなこと言うんじゃなかったと後悔している。
 こうなったら、いつもみたいに「憑かれたので除霊して下さいっ」って会いに行けばっ…… とも考えてみたが……




 なぜかあれから 全 然 憑 か れ な い。




(なんでこんな時に限って近寄ってこないのよ!!
 いつもなら向こうから嬉々として寄ってくるのに、最近は何故かこっちから近づいても逃げられる始末。
(以前の私だったらこんな状況、嬉しくてたまらないのにっ)
 何とか会う口実はないかと探してしまう程、今は栄慶さんに会いたくて仕方がない。
 たった10日でこんな気持ちになるなんて……。


「う~っ」
 もし編集長にお使いを頼まれなかったら、今日も明日もモヤモヤしながら過ごすことになっていただろう。
 曰く品が溜まっていて丁度良かった。
 渡された紙袋を見つめながらそんな事を考えていると、ふと……脳裏にある疑問が浮かんだ。
(そもそも、海に行く前にも一度、除霊しに行ってきたよね?)
 栄慶さんが私を海に誘った日。
 あの日も、曰く品と私に憑いた霊を祓いに行っていた。
 あれからまだ一ヶ月も経っていないのに、短期間でこんなに溜まるなんて初めてだ。
 そもそも、読者から送られてきた物が本物かどうかの仕分けは私がしてるし、この紙袋から覗かせている人形やお皿には何も憑いていなかった。
 まぁ……編集長は視えてないわけだし、本物かどうか分かるはずがないんだけど。
 それでも違和感を拭いきれなかった私は、邪魔にならないよう道の端に移動し、念のため紙袋の中を確認してみた。


「――!?




 ちょっとっ! これってっ





 雑 誌 の 付 録 じ ゃ な い っ!!





 袋の上の方はガイストに送られてきた物だったが、下の方に詰められていたのはファッション誌などに付いてくる、ポーチや化粧品など女子が喜びそうな付録の数々だった。
 恐らく別の部署で発行している、女性誌の付録の余りか何かだろう。サンプルと書かれたシールが貼ってある物もあった。
「あ、このリップ可愛い」
 思わず手に取って確かめる。
「えーと、なになに?」




『思わず彼が吸い付きたくなる、ぷるるんラブリップ』




「………」




 今は……いい。




 キャッチコピーらしき付箋に書かれた文字を読み、私はすぐにそれを袋へ戻した。
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登場人物紹介

室世癒見【むろせゆみ】24歳 

主人公

憑かれやすい女性編集者

永見栄慶【ながみえいけい】27歳

御祓いを得意とするインテリ坊主

壮真貴一朗【そうまきいちろう】43歳

ナルシストタイプな敏腕編集長

匡木圭吾【まさきけいご】

第二章登場人物

洋食亭サン・フイユ現オーナー

間柴一【ましばはじめ】 38歳

第三章登場人物

ガイスト編集部カメラマン

一条史真【いちじょうししん】27歳

第四章登場人物

宗國寺副住職

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