第39話 福岡大会決勝戦
文字数 3,670文字
『皆様、大変長らくお待たせいたしました。夏のインターハイの出場権をかけた、福岡大会が今始まります。解説は私、アナウンサーの三宅清二 と……』
『松木高太朗 がお送りしますっ!! いや~とうとう開始 だねっ!! なんかね、今日が待ち遠しくてね、全然眠れなかったの。いや~寝不足 でたまんないよこれぇ!!』
『実況席では早くも熱が帯び始めている中、会場では選手達が体を作り、試合開始の瞬間を待ち続けています。松木さん、団体戦ではどのチームに注目していますか?』
『ん~そうだねぇ……今年はどこも闘魂充分 だからねぇ~……柿宮高校かな? 笹垣高校かな? ……そうだそうだ、城南だよっ!! あの~……やたら長ったらしい名前のさっ!!』
『城南国際糸島アイランドスクール高等学院高校ですね。周囲の学校を吸収合併して出来た、全校生徒5000人のモンスター高校です。理事長の財前富男 が運営していたのですが、今年の2月に逮捕されており、現在は彼の秘書だった人間が運営しておりますね』
『1回視察で訪れたことがあるんだけどね、凄 く奇麗 な学校だったよ。設備に投資している感じがビンビンしたねっ!! いや~金かかってんな~って思っちゃったよ』
『今年の柔道部は大原 選手を中心として、新たに世界中から集められた、4人の留学生選手がレギュラーを務めており、昨年と比べて戦力が大きく底上げされています。優勝候補である蒼海大学付属高等学院の地位も、今年は危うくなってしまうのでしょうか?』
『んんんっ!! どうだろね!? 蒼海は昨年の全国大会で上位まで勝ち進んだし、その時のメンバーが3人いるからねっ!!』
『主将の花染 選手、副主将の木場 選手、そして四龍の一角、青龍の青桐 選手ですね』
『残りの2人も去年と比べて大きく成長しているしねっ!! 今年も蒼海が優勝するのかな? それとも番狂わせ が起こるのかな? いや~楽しみだよっ!!』
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試合会場の2階。
観覧席では蒼海の控えのメンバーが、これから戦いに臨む選手達を後押しするため、腹の底から声を上げていた。
マネージャー陣のリーダである花染葵 が、指揮を取り舞台裏を盛り上げている。
近くの観覧席では、学校の部外者ながらも多少の関係性がある、青山翼 と青山龍一 、飛鳥国光 が席に座り、これから始まる団体戦決勝を待ちわびていた。
「順調に勝ち進んで決勝か……翼っ!! 良かったじゃねぇか。あと一勝で、全国大会だぞ!!」
「う、うん……」
「……お前さ~……やっぱ今日は元気がねぇな。何だ? 風邪でも引いたのか?」
「え!? いや? ちょっと考えごとしてただけだよっ!!」
「考え事ねぇー……」
「ふっふ、まあまあ青山さん。子供は色々と悩みが多いんだ。時にはそっとしておくのも良いもんだよ」
「飛鳥さん、そんなものなんですかね……」
「ああそうさ。僕の子供の時も……」
「オラァ!! 負けたら金が無一文 なんだからよぉ!! シャキッとしろよシャキッと!!」
「どれだけ応援してきたか分かってんのかぁ!? そんな雑魚 共ぶっ倒せぇ!!」
3人のすぐ側で、ガラの悪い男達が、1階の試合会場へと向かって大声を上げている。
柔道が一般娯楽まで浸透しているこの世界では、生徒よりも白熱する人間が出てきており、頻繁に応援ともとれない暴言が飛び交っている。
「……ふう、邪魔 が入ったね」
「最近、あの手の輩が多くなりましたね」
「昔から……それこそ、僕の現役時代からいたけどね……いつの時代もそうさ。主役は子供達なのに、大人があんなに熱くなってどうするんだい……!!」
「……」
「おっとすまない。昔を思い出しちゃってね……こっちまで熱くなっちゃったよ……それでだ。決勝の対戦順番はもう出たのかな?」
「ええ、この紙に書かれている通りですね」
「どれどれ……」
「もうちょっと下げておっちゃん……僕見えないよ……」
青山龍一が入手した対戦表を覗き込む2人。
そこには各選手の細かなデータと、対戦順番が書かれていた。
~蒼海大学付属高等学院~
先鋒:青桐龍夜 身長176㎝ 体重72.8㎏ 水属性・龍属性
次鋒:石山鉄平 身長188㎝ 体重122㎏ 山属性
中堅:伊集院慧 身長173㎝ 体重59.9㎏ 氷属性・炎属性
副将:木場燈牙 身長177㎝ 体重80.6㎏ 炎属性
大将:花染司 身長179㎝ 体重65.5㎏ 風属性・炎属性
~城南国際糸島アイランドスクール高等学院高校~
先鋒:シモン・ノーブル 身長191㎝ 体重111㎏ 山属性・水属性
次鋒:オリバー・ウィルソン 身長176㎝ 体重72.1㎏ 水属性
中堅:ガブリエル・シルヴァ 身長170㎝ 体重58.9㎏ 雷属性
副将:アーロン・アレンゼ 身長183㎝ 体重79.6㎏ 炎属性・山属性
大将:大原乃亜 身長171㎝ 体重65.7㎏ 氷属性
「……うぇ? いきなり青桐お兄ちゃんが出てくるの?」
「そうだな……翼、丁度いいから説明してやろうか。柔道の団体戦は、戦う順番も結構重要になってくんだよ。星取り戦形式……先鋒は先鋒、次鋒は次鋒みたいに、それぞれの順番同士の選手が戦う試合形式の場合はだ、1番強い人間は大将か中堅に置いてる事が多いんだよ」
「……ん? 中堅? 何で?」
「そりゃお前、始めに2連敗したら後がないだろ? 中堅はそうなった時、絶対に負けられないんだよ。だから何が何でも勝つために、チームで1番強い選手か、2番目に強い選手を配置することが多いんだよ」
「へぇー……ん? けど今回って勝ち抜き戦形式だよね?」
「ああ、どちらかのチームが全員負けるまで戦う形式だとだ……1番強い人間は大将か先鋒に配置されることが多いんだよ」
「大将は分かるけど……なんで先鋒なの?」
「そうだな……色々と理由はあるんだが……1番はやっぱチームに勢いをつけるためだな。勝てば何回でも戦える勝ち抜き戦だと、連勝すればそれだけ気持ちに余裕が生まれるからな。攻撃的 な采配をする監督なら、先鋒に最強 を持ってくるんじゃねぇか?」
1枚の紙切れから、それぞれのチーム事情を読み解く青山龍一。
この試合表が示す両監督の思惑は、チームのエースを先鋒に配置して主導権を握るというものであり、奇しくも一致しているのであった。
ー---------------------------------
「そうかーい、ファイトぉぉぉぉぉっ!!」
『ファイトぉぉぉぉっ!!』
「じょうな~んっ!! ファイッ!!」
『オッ!! ファイッ!! オッ!! ファイッ!! オォォォォォッ!!」』
2階の観客席で応援する両チームの部員達に見守られる中、円陣を組み、監督から指示を受けている選手達。
普段と比べて一段と力強い言葉と共に、試合前の最後の打ち合わせをしている。
「よしお前らっ!! この試合に勝てば全国大会だっ!! いいか? やることはいつもと変わらないっ!! 自分の柔道をするようにっ!! 相手は体格のいい留学生選手が多い、組手で負けるなよっ!?」
「了解 っ!!」
「勝つのは俺達蒼海だっ!! 気合い入れていけっ!! 花染っ!! 最後はお前が〆ろっ!!」
「了解 ……いいかお前ら、一世を風靡するのは俺達だっ!!」
ー----------------------------------
「さぁて……いよいよきたのう……いいか其方ら、相手は蒼海じゃ。ないとは思うが……決して油断はするなよ?」
「コーチとしては特に今の所話すことは無いかな。試合を見ながら助言 をしていこうか。それじゃ、大原さん、よろしくね」
「理解 りました。いいかお前ら、この試合に勝てば……」
「う~ん……ワタシ、青桐さんと初っ端から戦うのですカ……最高 な組み合わせじゃないですカッ!!」
「ズルいヨッ!! オリバーが戦いタかったの二ッ!!」
「HAHAHA!! コイツは運が無かっタゼッ!! シモン、頼むゼッ!!」
「They say luck is part of your ability……(運も実力の内と言いますからね……)」
「お、おいお前ら……っ!! 話聞けよっ!? 話ッ!! 聞けぇ"ぇ"ぇ"ッ!!」
「Oh……大原 怒 だ……抑えて抑えて」
「……っ!! ……はぁ~……な~んか1年近くお前らと絡んでると、怒 るのも馬鹿らしくなってきたな……お前ら、絶対勝つぞ。優勝旗は俺達が奪い取るっ!! いいなっ!?」
「OKッ!!」
ー-------------------------------
『さあいよいよ決勝戦が始まります。団体戦を行う選手達が、場内へと入り、互いに礼を行っております。先鋒は青桐龍夜選手とシモン・ノーブル選手の戦い。チームの最強 選手同士の戦いとなります』
『いやね、いきなり最高潮 って感じだね。ここは両チーム勝ちたいところ……目が離せないよっ!!』
『審判の指示に従い一礼する両者……今っ!! 試合開始のブザーが鳴りましたっ!!』
『
『実況席では早くも熱が帯び始めている中、会場では選手達が体を作り、試合開始の瞬間を待ち続けています。松木さん、団体戦ではどのチームに注目していますか?』
『ん~そうだねぇ……今年はどこも
『城南国際糸島アイランドスクール高等学院高校ですね。周囲の学校を吸収合併して出来た、全校生徒5000人のモンスター高校です。理事長の
『1回視察で訪れたことがあるんだけどね、
『今年の柔道部は
『んんんっ!! どうだろね!? 蒼海は昨年の全国大会で上位まで勝ち進んだし、その時のメンバーが3人いるからねっ!!』
『主将の
『残りの2人も去年と比べて大きく成長しているしねっ!! 今年も蒼海が優勝するのかな? それとも
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試合会場の2階。
観覧席では蒼海の控えのメンバーが、これから戦いに臨む選手達を後押しするため、腹の底から声を上げていた。
マネージャー陣のリーダである
近くの観覧席では、学校の部外者ながらも多少の関係性がある、
「順調に勝ち進んで決勝か……翼っ!! 良かったじゃねぇか。あと一勝で、全国大会だぞ!!」
「う、うん……」
「……お前さ~……やっぱ今日は元気がねぇな。何だ? 風邪でも引いたのか?」
「え!? いや? ちょっと考えごとしてただけだよっ!!」
「考え事ねぇー……」
「ふっふ、まあまあ青山さん。子供は色々と悩みが多いんだ。時にはそっとしておくのも良いもんだよ」
「飛鳥さん、そんなものなんですかね……」
「ああそうさ。僕の子供の時も……」
「オラァ!! 負けたら金が
「どれだけ応援してきたか分かってんのかぁ!? そんな
3人のすぐ側で、ガラの悪い男達が、1階の試合会場へと向かって大声を上げている。
柔道が一般娯楽まで浸透しているこの世界では、生徒よりも白熱する人間が出てきており、頻繁に応援ともとれない暴言が飛び交っている。
「……ふう、
「最近、あの手の輩が多くなりましたね」
「昔から……それこそ、僕の現役時代からいたけどね……いつの時代もそうさ。主役は子供達なのに、大人があんなに熱くなってどうするんだい……!!」
「……」
「おっとすまない。昔を思い出しちゃってね……こっちまで熱くなっちゃったよ……それでだ。決勝の対戦順番はもう出たのかな?」
「ええ、この紙に書かれている通りですね」
「どれどれ……」
「もうちょっと下げておっちゃん……僕見えないよ……」
青山龍一が入手した対戦表を覗き込む2人。
そこには各選手の細かなデータと、対戦順番が書かれていた。
~蒼海大学付属高等学院~
先鋒:
次鋒:
中堅:
副将:
大将:
~城南国際糸島アイランドスクール高等学院高校~
先鋒:シモン・ノーブル 身長191㎝ 体重111㎏ 山属性・水属性
次鋒:オリバー・ウィルソン 身長176㎝ 体重72.1㎏ 水属性
中堅:ガブリエル・シルヴァ 身長170㎝ 体重58.9㎏ 雷属性
副将:アーロン・アレンゼ 身長183㎝ 体重79.6㎏ 炎属性・山属性
大将:
「……うぇ? いきなり青桐お兄ちゃんが出てくるの?」
「そうだな……翼、丁度いいから説明してやろうか。柔道の団体戦は、戦う順番も結構重要になってくんだよ。星取り戦形式……先鋒は先鋒、次鋒は次鋒みたいに、それぞれの順番同士の選手が戦う試合形式の場合はだ、1番強い人間は大将か中堅に置いてる事が多いんだよ」
「……ん? 中堅? 何で?」
「そりゃお前、始めに2連敗したら後がないだろ? 中堅はそうなった時、絶対に負けられないんだよ。だから何が何でも勝つために、チームで1番強い選手か、2番目に強い選手を配置することが多いんだよ」
「へぇー……ん? けど今回って勝ち抜き戦形式だよね?」
「ああ、どちらかのチームが全員負けるまで戦う形式だとだ……1番強い人間は大将か先鋒に配置されることが多いんだよ」
「大将は分かるけど……なんで先鋒なの?」
「そうだな……色々と理由はあるんだが……1番はやっぱチームに勢いをつけるためだな。勝てば何回でも戦える勝ち抜き戦だと、連勝すればそれだけ気持ちに余裕が生まれるからな。
1枚の紙切れから、それぞれのチーム事情を読み解く青山龍一。
この試合表が示す両監督の思惑は、チームのエースを先鋒に配置して主導権を握るというものであり、奇しくも一致しているのであった。
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「そうかーい、ファイトぉぉぉぉぉっ!!」
『ファイトぉぉぉぉっ!!』
「じょうな~んっ!! ファイッ!!」
『オッ!! ファイッ!! オッ!! ファイッ!! オォォォォォッ!!」』
2階の観客席で応援する両チームの部員達に見守られる中、円陣を組み、監督から指示を受けている選手達。
普段と比べて一段と力強い言葉と共に、試合前の最後の打ち合わせをしている。
「よしお前らっ!! この試合に勝てば全国大会だっ!! いいか? やることはいつもと変わらないっ!! 自分の柔道をするようにっ!! 相手は体格のいい留学生選手が多い、組手で負けるなよっ!?」
「
「勝つのは俺達蒼海だっ!! 気合い入れていけっ!! 花染っ!! 最後はお前が〆ろっ!!」
「
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「さぁて……いよいよきたのう……いいか其方ら、相手は蒼海じゃ。ないとは思うが……決して油断はするなよ?」
「コーチとしては特に今の所話すことは無いかな。試合を見ながら
「
「う~ん……ワタシ、青桐さんと初っ端から戦うのですカ……
「ズルいヨッ!! オリバーが戦いタかったの二ッ!!」
「HAHAHA!! コイツは運が無かっタゼッ!! シモン、頼むゼッ!!」
「They say luck is part of your ability……(運も実力の内と言いますからね……)」
「お、おいお前ら……っ!! 話聞けよっ!? 話ッ!! 聞けぇ"ぇ"ぇ"ッ!!」
「Oh……
「……っ!! ……はぁ~……な~んか1年近くお前らと絡んでると、
「OKッ!!」
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『さあいよいよ決勝戦が始まります。団体戦を行う選手達が、場内へと入り、互いに礼を行っております。先鋒は青桐龍夜選手とシモン・ノーブル選手の戦い。チームの
『いやね、いきなり
『審判の指示に従い一礼する両者……今っ!! 試合開始のブザーが鳴りましたっ!!』