第四項 夢なのかも?
文字数 859文字
「あれ?何も……ない?」
どうしたことでしょう。夢から覚めた様子でもないのですが、まだ無事のようです。勇気を振り絞って目を開くと、目の前に若い男性が立ちはだかっていました。左手に刀を握り、少年漫画に出てくるような、今まさに刀を振り抜いて、それを格好良く鞘に戻した、そんな感じです。
化け物は悲鳴を上げて後ずさりしていきました。右脇を切り裂かれ、左手で庇っています。
「やぁ、俺も混ぜてくれないか?」
暗くてよくわかりませんが、夏なのにコートを羽織り、刀を携えたその男性は
「遊ぼうよ」
その場にそぐわぬふざけたトーンで、化け物を挑発します。
「ガォアアアア!」
これに怒りを覚えたのか、右脇を切り裂かれて頭にきたのか、化け物は物凄い咆哮を上げて突進しました。間一髪、彼は私を抱っこして、店の外に飛び出しました。低い姿勢で廊下を走り、エスカレーターに目を留めると、そこから一気に飛び降ります。
「ひぃやぁあああ!?」
あまりの非常識さに、もう夢だって思っています。夢だと思っていても、さすがにびっくりで、変な悲鳴をあげてしまいました。
「ビルの外に走って」
1階に降りた彼は、私を降ろしてそう言いました。
「あ、あの……」
「このままお姫様を抱っこしてたいんだけどさ、ちょっと戦いづらいんだ」
そう言って微笑むと、私に背を向けます。一方的に指示だけ出して、迫り来る化け物に立ち向かうのです。
走れと言われても、私は動くことができませんでした。ただ、彼の後ろ姿を見つめていました。化け物の暴力、降り下ろされる拳を避けながら、果敢に斬りかかっている彼の背中を。
彼は高速で動き回りました。もちろん、常識の範囲内なんでしょうけど、小回りを利かせて死角に周り、最後には化け物の背後をとりました。
「おやすみ!」
その声と同時に剣閃が走り
「イギィヤァアアアア!」
化け物の叫び声が響き渡ります。あまりにも大きい、あまりにも酷いその轟音のショックで、私は意識を失いました。夢の中で意識を失うってのも、変な話ですけどね。
どうしたことでしょう。夢から覚めた様子でもないのですが、まだ無事のようです。勇気を振り絞って目を開くと、目の前に若い男性が立ちはだかっていました。左手に刀を握り、少年漫画に出てくるような、今まさに刀を振り抜いて、それを格好良く鞘に戻した、そんな感じです。
化け物は悲鳴を上げて後ずさりしていきました。右脇を切り裂かれ、左手で庇っています。
「やぁ、俺も混ぜてくれないか?」
暗くてよくわかりませんが、夏なのにコートを羽織り、刀を携えたその男性は
「遊ぼうよ」
その場にそぐわぬふざけたトーンで、化け物を挑発します。
「ガォアアアア!」
これに怒りを覚えたのか、右脇を切り裂かれて頭にきたのか、化け物は物凄い咆哮を上げて突進しました。間一髪、彼は私を抱っこして、店の外に飛び出しました。低い姿勢で廊下を走り、エスカレーターに目を留めると、そこから一気に飛び降ります。
「ひぃやぁあああ!?」
あまりの非常識さに、もう夢だって思っています。夢だと思っていても、さすがにびっくりで、変な悲鳴をあげてしまいました。
「ビルの外に走って」
1階に降りた彼は、私を降ろしてそう言いました。
「あ、あの……」
「このままお姫様を抱っこしてたいんだけどさ、ちょっと戦いづらいんだ」
そう言って微笑むと、私に背を向けます。一方的に指示だけ出して、迫り来る化け物に立ち向かうのです。
走れと言われても、私は動くことができませんでした。ただ、彼の後ろ姿を見つめていました。化け物の暴力、降り下ろされる拳を避けながら、果敢に斬りかかっている彼の背中を。
彼は高速で動き回りました。もちろん、常識の範囲内なんでしょうけど、小回りを利かせて死角に周り、最後には化け物の背後をとりました。
「おやすみ!」
その声と同時に剣閃が走り
「イギィヤァアアアア!」
化け物の叫び声が響き渡ります。あまりにも大きい、あまりにも酷いその轟音のショックで、私は意識を失いました。夢の中で意識を失うってのも、変な話ですけどね。