第十一項 逢えたのに
文字数 1,214文字
「ったく……らしくないな」
確かに、彼らしくありません。完全に地が出ています。
「いいかい?この中を突っ切って、左手の出口に行くんだ。傍に地下鉄の入り口がある。コンコースを直進すれば、駅の反対側に出られる。そこなら安全だ」
私たちを救ったあと、彼は捲し立てるように説明しました。より安全な逃走ルートと、隠れ場所のお話です。
「行け!振り返るなよ!」
私は黙って頷き、助けた少年と、隠れていた(逃げ遅れた?)老夫婦と一緒に走りました。
「君は、あの男と知り合いなのかね?」
地下鉄の入口に逃げ込んだとき、私たちは一息つきました。だって、体力のない女子供と老人が、走りっぱなしだったのですから。そんなとき、肩で息をしている私に、おじいさんが話しかけてきたのです。
「あ、はい。でも、親しい訳じゃありませんよ?」
「もしかして彼は、”レン”という名ではありませんか?」
おっと、話を戻さないとですよね。ショッピングモールの中央大通り、そこはまだ、黒煙で包まれていました。それを彼女は、トレーラーの運転席で呆然と眺めています。
「なんということだ……」
銀色の悪魔、蓮野さんが召喚したそれに、ハヌマーンは吹き飛ばされました。ハヌマーンはヒンドゥー教の叙事詩、ラーマーヤナに出てくる巨大な猿の神様です。猿の軍勢を率いて戦う民衆の守護神。プレリュードである化け物たちのリーダーとしては、うってつけの名前かもしれません。しかもハヌマーンは猿型で人に近い形なので、大型のガとリングガンがよく似合います。
「煙が晴れない……煙ごと結界に取り込んだのか……?」
なんと、蓮野さんが結界を張ったようです。原理とかはよくわかりませんが、彼は現実の一部を変質させて、自分とハヌマーンを閉じ込めたようです。もう、変人をとっくの昔に通り越しています。
「グラマトンの粒子濃度のコントロール。こんなこと、感染者にはできない。奴はプラヴァシーの……継承者なのか?」
”プラヴァシー”、みなさんも覚えてくださいね。継承者にのみに赦された、この物語の核となる力です。
「オンコットは?安部の奴はどうした?」
銀行側に向かわせた化け物のことです。既に撃破されたであろうことに気づいたようです。
「くっ……」
彼女が唇を噛み締めていると、ハヌマーンが立ち上がりました。金属が軋むような音を立てつつ、なんとか立ち上がります。
「まだ戦えるか?」
そんな彼女の問いに、ハヌマーンが頷いてみせます。でもすぐに、それはいきり立った叫びに変わります。
グァォオオオオオオ!
とってもとっても激しくて、もう歯科したら動揺を隠しているのかもです。
「歩兵が……どうしてプレリュードに立ち向かえる!?」
だって彼、堂々と立ち塞がったのですから。
「対戦車用の重火器も装備してるのよ!?」
刀一本で平然としている彼に、彼女の畏怖の視線と、ハヌマーンの銃口が向けられます。
確かに、彼らしくありません。完全に地が出ています。
「いいかい?この中を突っ切って、左手の出口に行くんだ。傍に地下鉄の入り口がある。コンコースを直進すれば、駅の反対側に出られる。そこなら安全だ」
私たちを救ったあと、彼は捲し立てるように説明しました。より安全な逃走ルートと、隠れ場所のお話です。
「行け!振り返るなよ!」
私は黙って頷き、助けた少年と、隠れていた(逃げ遅れた?)老夫婦と一緒に走りました。
「君は、あの男と知り合いなのかね?」
地下鉄の入口に逃げ込んだとき、私たちは一息つきました。だって、体力のない女子供と老人が、走りっぱなしだったのですから。そんなとき、肩で息をしている私に、おじいさんが話しかけてきたのです。
「あ、はい。でも、親しい訳じゃありませんよ?」
「もしかして彼は、”レン”という名ではありませんか?」
おっと、話を戻さないとですよね。ショッピングモールの中央大通り、そこはまだ、黒煙で包まれていました。それを彼女は、トレーラーの運転席で呆然と眺めています。
「なんということだ……」
銀色の悪魔、蓮野さんが召喚したそれに、ハヌマーンは吹き飛ばされました。ハヌマーンはヒンドゥー教の叙事詩、ラーマーヤナに出てくる巨大な猿の神様です。猿の軍勢を率いて戦う民衆の守護神。プレリュードである化け物たちのリーダーとしては、うってつけの名前かもしれません。しかもハヌマーンは猿型で人に近い形なので、大型のガとリングガンがよく似合います。
「煙が晴れない……煙ごと結界に取り込んだのか……?」
なんと、蓮野さんが結界を張ったようです。原理とかはよくわかりませんが、彼は現実の一部を変質させて、自分とハヌマーンを閉じ込めたようです。もう、変人をとっくの昔に通り越しています。
「グラマトンの粒子濃度のコントロール。こんなこと、感染者にはできない。奴はプラヴァシーの……継承者なのか?」
”プラヴァシー”、みなさんも覚えてくださいね。継承者にのみに赦された、この物語の核となる力です。
「オンコットは?安部の奴はどうした?」
銀行側に向かわせた化け物のことです。既に撃破されたであろうことに気づいたようです。
「くっ……」
彼女が唇を噛み締めていると、ハヌマーンが立ち上がりました。金属が軋むような音を立てつつ、なんとか立ち上がります。
「まだ戦えるか?」
そんな彼女の問いに、ハヌマーンが頷いてみせます。でもすぐに、それはいきり立った叫びに変わります。
グァォオオオオオオ!
とってもとっても激しくて、もう歯科したら動揺を隠しているのかもです。
「歩兵が……どうしてプレリュードに立ち向かえる!?」
だって彼、堂々と立ち塞がったのですから。
「対戦車用の重火器も装備してるのよ!?」
刀一本で平然としている彼に、彼女の畏怖の視線と、ハヌマーンの銃口が向けられます。