第六項 悪夢が徐々に

文字数 735文字

 「あっはっは!ごめんごめん」
さっきの攻撃がクリーンヒットしたのか、彼は笑いながら謝りました。どう見ても、心がこもっていませんが。
「君があんまり可愛いもんだから、からっちゃったんだ。許してね」
謝ってくれたけど、またしても一言多い……
 謝ってくれたって、こっちは狼狽させられて、大きな声で”可愛い”とか言われて、一勝二敗です。お店にいる初対面の方々、つまり他のお客様方ですが、老若男女問わず、こちらをジロジロ見ています。恥ずかしくってもう、顔から火が出そうでした。いえ、火は出ないまでも、私がお店から出ていきたかったです。そんな私を尻目に
「はぁ~~~……」
彼は大きなため息を吐きました。
「どうしたんですか?」
一応礼儀といいますか、あんまり興味なかったんですが、ため息の理由を聞いてあげます。
「いや、君が急に先生の名前を出すから」
「出すから?」
「会いたくなっちゃったよ……」
「ハイハイ、ヨカッタデスネ」
うっかり棒読みでした。呆れたというかなんというか……
 「ところで、8月31日ってのは夏休み最後の日だ」
「まぁ……そうですね」
今度はいったいどういう切り口でくるんでしょうか。
「だから、みんなに惜しまれる、終わらないでぇ~って言われる」
私は警戒していました。
「とっても貴重な一日だ」
う~ん、このヒト、何言いたいんだろ?
「それに」
まだ続くんだ……
「大切なヒトの……誕生日でもある」
うんうん……大切なヒト……
「って誰!?」
彼の話はメチャクチャです。オチもないまま、でも何か大事なことを言った感で自己満足に浸っています。スゴロクでいうなら、”オシャレなけフェで、友人とお茶をする。そこに残念なヒトが相席で、一回休み”って感じです。
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登場人物紹介

桜苗沙希(さなえさき)(16)

ちょっと天然な、お菓子系の美少女。

パステルカラーがよく似合う。

幼い時に両親が離婚し、心に深い傷を隠し持っている。

それゆえか感受性が強く、不思議な青年、蓮に惹かれてしまう。

蓮野久季(はすのひさき)(21?) 通称:蓮(レン)

その経歴や言動から、とにかく謎の多い青年。

「黒い剣士、銀色の悪魔、ワケあり伊達眼鏡、生きる女難の相」など、いろいろ呼ばれている。

物語の核である、「グラマトン、プラヴァシー、継承者、閉じた輪廻」に密接に関わる、左利きの男。

セト

蓮が利用するアルドナイ(AI)

蓮を「兄サン」と呼び、主に情報収集と相談役として活躍する。

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