第九項 逢いたくて
文字数 1,456文字
夢の中で、六、七歳くらいの男の子が、両親に殴られていました。
「パパ、どうして僕をぶつの?なんで百点取らないとぶたれるの?」
「誰のおかげで飯が食えてると思ってんだ!」
浮気をし、家にお金を入れない父親が、怒鳴り散らして暴れます。
「ママ、どうして僕をぶつの?なんで毎日お経唱えてるの?」
「あんたはそんなこともわかんないの?ご本尊様の素晴らしさがわからないの!」
夫と上手くいかず、カルト宗教に溺れる母親が、ヒステリーで喚き散らします。
「お前なんか産まれてこなければよかったんだ!」
浮気がばれて妻と喧嘩し、怒りで頭がいっぱいの父親が少年に八つ当たりします。日曜日は、失禁するまで全身を殴りつけられたようです。だから月曜日の体育の時間、体操着に着替えるとき、それは発覚しました。学校の先生が悲鳴を上げて、母親に電話をしたのです。だって少年の全身が、アザだらけだったのですから……
そんな少年を、実の息子を、あの人達はさらに痛めつけるのです。
「俺に恥を掻かせやがって!」
子供への暴力がばれて、激怒した父親が一層激しく痛めつけます。
「あんたさえ産まれてこなければ!」
仏がどうとか言いながら、命が大切だとか説きながら、母親も少年を殴り続けます。この両親(ひとたち)は、徹底的に少年の命と尊厳を、踏み躙り続けるです。
「ひどい……」
悲しい夢でした。この時代の日本では、アルドナイの監視があるから、虐待も大分減りました。児童相談所もAIが判断するので、機械的に手続きや保護が行われます。そして、虐待をした親のアルドナイが証言し、偽証もできません。だから私たちは、虐待というものを、”かつてあったもの”的な情報として、知っているレベルです。でも
「こんなのって……ないよ……」
辛すぎる少年の心を垣間見て、被害者の苦しみ、その一旦を感じたのです。
日曜日の朝、次から次へと涙が溢れ出し、私は泣きながら目を覚ましました。その少年の代わりに、泣かずにはいられなかったのです。
「大丈夫だよ……ちゃんと伝えるから」
私は決意しました。
「お姉ちゃんに任せて」
急いで着替えて出かけなきゃ!彼に、ちゃんと伝えなきゃ!
「蓮野さん!」
「サキ……大丈夫?」
今朝もアマノに心配されます。
「顔色、良くないよ?」
それもそうです。昨日は一日中蓮野さんを探していたのに、見つけられなかったのです。博物館はずっと留守にしてて、夕方訪問したときも帰っていませんでした。もう少し遅くまで粘れば、会えたのかもしれません。でも、目の前の喫茶店で張り込むにしても、もう紅茶を飲めません。強制的に教えられた彼の家の電話も、既に解約されていて、連絡がつかなかったのです。
「体調、悪いの?」
「ううん、大丈夫。心配してくれてありがとう」
今日の私は、相当具合が悪そうだったのでしょう。メグも心配そうで、茶化してくる気配がありません。
「実は、蓮野さんを捜してるの」
「え?どうして急に?」
私の言葉に、2人は驚いていました。だけど、別にサラさんが現れて不安になったとか、ジェラシーしたとかじゃありません。
「会って伝えないといけないの!どうしても、彼に会いたいの!」
私があんまりにも必死だから、2人は何かを感じてくれたのでしょう。
「わかった」
そう言って手伝ってくれました。3人一緒に学校をサボって、月曜の朝から彼を捜しにお出掛けです。赤信号、みんなで渡れば怖くない。学校も、みんなでサボれば……って、本当はダメですよね。
「パパ、どうして僕をぶつの?なんで百点取らないとぶたれるの?」
「誰のおかげで飯が食えてると思ってんだ!」
浮気をし、家にお金を入れない父親が、怒鳴り散らして暴れます。
「ママ、どうして僕をぶつの?なんで毎日お経唱えてるの?」
「あんたはそんなこともわかんないの?ご本尊様の素晴らしさがわからないの!」
夫と上手くいかず、カルト宗教に溺れる母親が、ヒステリーで喚き散らします。
「お前なんか産まれてこなければよかったんだ!」
浮気がばれて妻と喧嘩し、怒りで頭がいっぱいの父親が少年に八つ当たりします。日曜日は、失禁するまで全身を殴りつけられたようです。だから月曜日の体育の時間、体操着に着替えるとき、それは発覚しました。学校の先生が悲鳴を上げて、母親に電話をしたのです。だって少年の全身が、アザだらけだったのですから……
そんな少年を、実の息子を、あの人達はさらに痛めつけるのです。
「俺に恥を掻かせやがって!」
子供への暴力がばれて、激怒した父親が一層激しく痛めつけます。
「あんたさえ産まれてこなければ!」
仏がどうとか言いながら、命が大切だとか説きながら、母親も少年を殴り続けます。この両親(ひとたち)は、徹底的に少年の命と尊厳を、踏み躙り続けるです。
「ひどい……」
悲しい夢でした。この時代の日本では、アルドナイの監視があるから、虐待も大分減りました。児童相談所もAIが判断するので、機械的に手続きや保護が行われます。そして、虐待をした親のアルドナイが証言し、偽証もできません。だから私たちは、虐待というものを、”かつてあったもの”的な情報として、知っているレベルです。でも
「こんなのって……ないよ……」
辛すぎる少年の心を垣間見て、被害者の苦しみ、その一旦を感じたのです。
日曜日の朝、次から次へと涙が溢れ出し、私は泣きながら目を覚ましました。その少年の代わりに、泣かずにはいられなかったのです。
「大丈夫だよ……ちゃんと伝えるから」
私は決意しました。
「お姉ちゃんに任せて」
急いで着替えて出かけなきゃ!彼に、ちゃんと伝えなきゃ!
「蓮野さん!」
「サキ……大丈夫?」
今朝もアマノに心配されます。
「顔色、良くないよ?」
それもそうです。昨日は一日中蓮野さんを探していたのに、見つけられなかったのです。博物館はずっと留守にしてて、夕方訪問したときも帰っていませんでした。もう少し遅くまで粘れば、会えたのかもしれません。でも、目の前の喫茶店で張り込むにしても、もう紅茶を飲めません。強制的に教えられた彼の家の電話も、既に解約されていて、連絡がつかなかったのです。
「体調、悪いの?」
「ううん、大丈夫。心配してくれてありがとう」
今日の私は、相当具合が悪そうだったのでしょう。メグも心配そうで、茶化してくる気配がありません。
「実は、蓮野さんを捜してるの」
「え?どうして急に?」
私の言葉に、2人は驚いていました。だけど、別にサラさんが現れて不安になったとか、ジェラシーしたとかじゃありません。
「会って伝えないといけないの!どうしても、彼に会いたいの!」
私があんまりにも必死だから、2人は何かを感じてくれたのでしょう。
「わかった」
そう言って手伝ってくれました。3人一緒に学校をサボって、月曜の朝から彼を捜しにお出掛けです。赤信号、みんなで渡れば怖くない。学校も、みんなでサボれば……って、本当はダメですよね。