シナプス

文字数 671文字

 シナプスの生活は動物のそれとは全く違っていた。葉緑体を持つ彼らは、水と光があれば生きていけた。肉を食わないかれらにとって放牧は一見無意味のように思える。が、その理由は彼らの出産にあった。

 植物由来の彼らは大地に根を下ろし地下茎に芋のような球を作る。これがいわば動物の子宮にあたる。その玉の中で子供は育つ。球が成熟するころ親木は枯れてしまう。玉の成熟には親の光合成だけでは栄養が足りない。そこで大地からの栄養も吸収する。そのためには栄養豊かな腐葉土が必要だった。
 現在の農業でも栄養のある土を作るために鶏糞や牛糞など動物の糞を使うが、島には特殊な事情があった。島に生息するウィンガロンは排泄を海の上で飛行中に行う。空を飛ぶにはなるべく身軽なほうがいい。そこで、彼らは飛び立ってすぐに糞交じりの尿を排泄してしまうのである。結果、島には必要な微生物やカビなどの粘菌類が少なくなってしまった。

 シナプスは牧場からとってきた肉を地下の超高温多湿の洞窟で腐敗させることで補っていた。豊かな大地で出産したシナプスは枯れることはなくなった。シナプスの高齢化によりさらに腐葉土が必要になった。

 飛ぶことを覚えた白亜の翼竜パイソンは、ジャバヤと共に牧場へと出かける。かれらはまだ狩りはできない。牧場への往復の練習とともに、親たちの狩りの様子を見て学習する。当初、体の大きいパイソンを見て、牧場のティラノサウルスですら警戒して近づこうとしなかった。しかし、すぐにマイアサウラですら逃げなくなった。それは彼の手足がまだ貧弱だったことに気が付いたのだ。
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登場人物紹介

羽合 富羅(はあい ふら)

農業高校1年で寮暮らし。ジャージ姿。伸長約140cmのチビで地味。植物の声が聞こえる。夢は樹木医。

夏休みを北海道泊村の実家で過ごす。

春馬 瑠真(はるま るま)

富羅の実家の村に移住してきた。身長約180cm。知識はあるが性格は子供。カメレオンを腕に乗せ散歩させている。

夏美(なつみ)

富羅の中学の同級生。スポーツ万能。勘違いから富羅と勉をくっつけようとしている。

弥子(やこ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。土地成金のお嬢様。両性類や爬虫類が嫌い。瑠真を好きになる。

勉(つとむ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。勉強はできるが運動はダメ。夏美のことが好き。

ドクター・春馬

泊村の診療所の女医。元遺伝子治療の研究者。

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