アルマ

文字数 946文字

 アルマゲドン。15メートルはゆうにあろうという巨大翼竜につけられた種の名前だ。固体にはアルマと名前がつけられた。

「アルマの白いアルビノ細胞の約1割が未分化細胞と判明しました。これは成長過程にあるいわば赤ちゃんの細胞ということです。この細胞が興味深いのは、他の細胞のDNAの一部を取り込み進化することができる点にあります。進化が一定量に達すると、分化済みの細胞がリセットされ、再分化できるようになります。つまり、生きたまま部分的に進化するのです。調査の結果、羽は翼竜、足はティラノサウルス、体の表面は魚類のDNAの一部が結合していました。現代の生物ではこれは一種のガン化であり死んでしまうところですが、アルマはガン化を抑制しています。その結果、部分的進化という驚くべき能力を有したわけであります。」
 アルマは解凍過程で半数ほどの組織を失った。しかし、アルビノ細胞による進化能力が彼の残った細胞を複製し、生命維持に必要な臓器を再構築していった。5メートルほどに縮小したが、体の機能はほぼ復元し、残るは意識の回復を待つだけとなった。

「アルマの進化する細胞は、いわば人類が目指す究極の細胞ということであります。この能力を人類に使えば、人はガンに怯えることなく、永遠に生きながら進化し続けることができることになります。」
 問題は、アルマが目覚めた後、おとなしく協力するかどうかである。
 すっかり、氷は溶け時折体をゆすったりはするものの、彼は動こうとはしなかった。徐々に頭部が黒ずみ始めた。
「壊死なのか、進化なのか?」
 CTスキャンの結果、脳が縮んでいることが判明。点滴をしようにも成分も決定できない。せめて脱水しないようにと生理食塩水を補充する程度だった。が、1週間後、事態は激変する。縮んだ脳の周囲に新しい組織が爆発的な速度で増え始めた。無数のひだが形成されていく。それは、獣の脳から人の脳への変化だった。

 彼は、解凍時に使われた大量の人の血液から、大脳を進化させるDNAを吸収、発動させた。十分な脳神経細胞が形成された後、彼は目覚めた。彼の体はすでに1メートルまでに縮んでいた。大きすぎる体は脳の活動を低下させると判断したのだろう。体形もトカゲと猿の合成のようになっていた。
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登場人物紹介

羽合 富羅(はあい ふら)

農業高校1年で寮暮らし。ジャージ姿。伸長約140cmのチビで地味。植物の声が聞こえる。夢は樹木医。

夏休みを北海道泊村の実家で過ごす。

春馬 瑠真(はるま るま)

富羅の実家の村に移住してきた。身長約180cm。知識はあるが性格は子供。カメレオンを腕に乗せ散歩させている。

夏美(なつみ)

富羅の中学の同級生。スポーツ万能。勘違いから富羅と勉をくっつけようとしている。

弥子(やこ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。土地成金のお嬢様。両性類や爬虫類が嫌い。瑠真を好きになる。

勉(つとむ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。勉強はできるが運動はダメ。夏美のことが好き。

ドクター・春馬

泊村の診療所の女医。元遺伝子治療の研究者。

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