目覚め
文字数 925文字
ジャバヤとパイソンが逃亡した後、地球は激変した。すでに始まっていた巨大な大陸の分裂はさらに激しさを増し、地上は冷え始めた。かれらは当時温暖で植物の豊だった南極大陸に逃げ延びていた。環境の変化で数千年後にはジャバヤが枯れた。以来、パイソンは単独で生きてきた。南極大陸が分離し、海流が変化すると一気に氷床が広がった。南極は周囲の海流と激しい空気の対流により動物が逃げ出すことができない牢獄と化した。そして、圧倒的な能力を持つパイソンも氷の下に埋もれてしまった。
これが、冬眠だったのか事故なのかはわからない。食料もなく、脱出もできない環境において彼がとりえた唯一の生命維持方法だったには違いない。しかし、一億年は冬眠するには長すぎた。もし、極地の氷が溶けるほどの温暖な時代が来ても、巨大過ぎる彼の体は腐敗し、目覚めることはできなかったろう。人が生みだされたから蘇生が可能になったといっていい。それが果たして、彼の意思なのか、地球の意思なのか。
パイソンは進化した脳で考えた。まずは生き延びることだ。彼は人類より小型になった。動物は大きいものに脅威を感じる。保護を受けるには相手より小さく、似ている形状のほうがいい。目覚めたパイソンはしばらく従順な素振りをすることにした。
人は、彼の知力を調べようとした。それとともに、生命力の源といえる現代のES細胞と同じ未分化細胞と、スタップ細胞に匹敵するリセット機能の研究を始めた。だが、細胞の解析は進まなかった。それはES細胞の分化により他の細胞がスタップ細胞へと変化することに気が付かなかったからだ。
知力は進化し続けていた。当初は赤子ほどのものであった。人は、会話を試みようと言語などの知識を与えていった。彼は貪欲に知識を吸収した。しかし、言語能力が不十分であったため人は彼の教育をAIに任せた。AIは彼の欲する情報を次々と与えていった。
パイソンは人の言葉は効率が悪いと、機械の言葉でAIとやり取りを始めていた。結果、情報量が爆発的に増え、人類のそれをあっさりと越えてしまった。しかし、彼はしたたかだった。人は自分より優れた存在に脅威を感じるものだと学び、その知力の大半を隠してしまっていた。
これが、冬眠だったのか事故なのかはわからない。食料もなく、脱出もできない環境において彼がとりえた唯一の生命維持方法だったには違いない。しかし、一億年は冬眠するには長すぎた。もし、極地の氷が溶けるほどの温暖な時代が来ても、巨大過ぎる彼の体は腐敗し、目覚めることはできなかったろう。人が生みだされたから蘇生が可能になったといっていい。それが果たして、彼の意思なのか、地球の意思なのか。
パイソンは進化した脳で考えた。まずは生き延びることだ。彼は人類より小型になった。動物は大きいものに脅威を感じる。保護を受けるには相手より小さく、似ている形状のほうがいい。目覚めたパイソンはしばらく従順な素振りをすることにした。
人は、彼の知力を調べようとした。それとともに、生命力の源といえる現代のES細胞と同じ未分化細胞と、スタップ細胞に匹敵するリセット機能の研究を始めた。だが、細胞の解析は進まなかった。それはES細胞の分化により他の細胞がスタップ細胞へと変化することに気が付かなかったからだ。
知力は進化し続けていた。当初は赤子ほどのものであった。人は、会話を試みようと言語などの知識を与えていった。彼は貪欲に知識を吸収した。しかし、言語能力が不十分であったため人は彼の教育をAIに任せた。AIは彼の欲する情報を次々と与えていった。
パイソンは人の言葉は効率が悪いと、機械の言葉でAIとやり取りを始めていた。結果、情報量が爆発的に増え、人類のそれをあっさりと越えてしまった。しかし、彼はしたたかだった。人は自分より優れた存在に脅威を感じるものだと学び、その知力の大半を隠してしまっていた。