復活

文字数 813文字

 連日、世界各地での熱波が報じられている。北半球の各所で40度を越える気温が観測されると、北極圏の氷が解け始めた。すでに半年前から南半球で始まっていた巨大なシダ類が繁茂が、ノルウェー、ロシア、日本、アメリカなどの都市郊外でも起きていた。そういったところでは小人が多数目撃された。
「緑色をした宇宙人だ。」
「銀色の小人だった。」

 地上の覇権争いを最初に仕掛けたのは、裸子植物だった。寒冷地に追いやられていた杉などの裸子植物が、温暖化によって弱り始めた被子植物の生息域へと拡大を図ったのである。虫媒花である被子植物は昆虫などの動物によって広がる。しかし、鳴いている蝉すらも失神する40度を越える猛暑の中では、虫たちもその生息域を変化させた。よって、被子植物も生息域を変化せざるを得なくなった。
 昆虫のいなくなった空白の大地は風媒花である裸子植物の天下になった。そして、高温多湿を好む二足歩行植物シナプスたちが永い眠りから覚めた。かれらは、地中で勢力を拡大していたが、高温の大地に一気にあふれ出してきた。

 裸子植物の一番の犠牲者は被子植物ではなく、実は人間だった。風媒花である彼らは、夏にもかかわらず大量の花粉を散布し始めた。それが、人々の花粉症を引き起こした。花粉症大国日本に学べと世界中でマスクが大流行した。被害がもっとも大きかったのは中国都市部であるのは言うまでも無い。黄砂、PM2.5、CO2、NOxなど最悪な環境の上に、花粉である。阿鼻叫喚地獄そのものである。

 50センチにも満たないシナプスたちは、捕まることなく活動した。砂漠を潤し、裸子植物の種を運ぶ。風任せだった裸子植物の繁殖を彼らが助けた。多くの土地の季候が亜熱帯化した。人間や家畜にとって過酷な環境も、自然の動物たちには快適だった。とくに爬虫類は大型化した。餌となる昆虫にとっては益々生存が難しくなり、被子植物の衰退にも拍車がかかることとなった。
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登場人物紹介

羽合 富羅(はあい ふら)

農業高校1年で寮暮らし。ジャージ姿。伸長約140cmのチビで地味。植物の声が聞こえる。夢は樹木医。

夏休みを北海道泊村の実家で過ごす。

春馬 瑠真(はるま るま)

富羅の実家の村に移住してきた。身長約180cm。知識はあるが性格は子供。カメレオンを腕に乗せ散歩させている。

夏美(なつみ)

富羅の中学の同級生。スポーツ万能。勘違いから富羅と勉をくっつけようとしている。

弥子(やこ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。土地成金のお嬢様。両性類や爬虫類が嫌い。瑠真を好きになる。

勉(つとむ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。勉強はできるが運動はダメ。夏美のことが好き。

ドクター・春馬

泊村の診療所の女医。元遺伝子治療の研究者。

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