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 アルマの変貌ぶりに学者たちは困った。このままでは種として分類できない。分類したところで、また進化すれば別の種になってしまう。やむなく彼らは『獣』という意味でアニマと呼ぶことにした。
 アニマが1体だけなのか、動物学者の議論は分かれた。種の保存のために生殖の必要のない彼にはパートナーは意味がないのかもしれない。あるいは獲物によって進化が変わる彼には仲間自体が認識できないかもしれない。さらに、彼が生まれた意味も理解しがたかった。他の生物が何万年とかけて進化して手に入れた能力をやすやすと横取りしてしまう。進化のコレクション。

 AIが出した結論は進化のタイムカプセルだった。彼が生まれた時代は地球では巨大なパンゲア大陸の崩壊の時期であり、種の絶滅が激しかったと思われる。危機を感じた動物たちはかれらの進化の結果をアルマに残したのではないか。しかし、彼の最終地が南極という最悪の場所となり凍結の道に至ったのではないか。

 生存競争のないAIに生命の意味を求めるのは間違いだったかもしれない。アルマにはわかっていた。かれは、動物たちを不当な支配から解放するために現れたことを。しかし、すでに植物と動物は共生関係にあり、植物は危険な存在ではなくなった。が、地上の種は減り続けている。彼は理解した。その原因が人間だということを。

 アルマは人間から得られだけの知識を得ると、姿を消した。アルマといえども単独では脱走などできない。かれには協力者がいた。それは、彼の進化の能力を解き明かし、永遠の命を手に入れようとするものたちだった。神獣組。アルマを生物の頂点とし、すべての生物を支配しようとする者達。当初、教祖はアルマを偶像として利用しようとした。しかし、所詮は人間の浅知恵。アルマは人間の弱点を知っていた。この世界で最も死を恐れる生物。それが人間だということを。
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登場人物紹介

羽合 富羅(はあい ふら)

農業高校1年で寮暮らし。ジャージ姿。伸長約140cmのチビで地味。植物の声が聞こえる。夢は樹木医。

夏休みを北海道泊村の実家で過ごす。

春馬 瑠真(はるま るま)

富羅の実家の村に移住してきた。身長約180cm。知識はあるが性格は子供。カメレオンを腕に乗せ散歩させている。

夏美(なつみ)

富羅の中学の同級生。スポーツ万能。勘違いから富羅と勉をくっつけようとしている。

弥子(やこ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。土地成金のお嬢様。両性類や爬虫類が嫌い。瑠真を好きになる。

勉(つとむ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。勉強はできるが運動はダメ。夏美のことが好き。

ドクター・春馬

泊村の診療所の女医。元遺伝子治療の研究者。

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