沈黙
文字数 650文字
恐怖の感情を有するものを、操る事は簡単だった。恐怖と開放。この繰り返しにより、心は開放を与えてくれるものを無条件で受け入れるようになる。どんなに頭で理解しようと、感情はあっさりと乗り越えてくる。その結果、いかに非合理的で不条理であろうとわずかな整合性を頼りに理論を組み立てていく。木を見て森を見ず。目の前の真理だけが真実となり、周りはすべて幻想となる。
アルマが消えて、人はかれの代わりを探した。しかし、闇雲に南極を掘り返すこともできず、見果てぬ夢を追い求めることにも疲れた。
やがて、人々の記憶からアルマは消えた。彼の存在が真実だったのか、幻想だったのか。見た事もない新種の生物は都市伝説としてひっそりと噂の中にその姿をとどめるだけとなった。
都会では満員電車にゆられ、何時間もかけて通勤や通学をする。毎日同じ時刻同じ場所で顔を合わせているはずなのに記憶に無い。そんな人たちがこの国を作っている。
真夏の暑い日。その日も東京は朝から30度を超えていた。電車・バスは窓を締め切り冷房をかけていたが、それでもじわじわと汗が噴出した。こんなに日に毒ガスがまかれても誰も気がつかないかもしれない。
「地獄の窯の蓋が開いたんじゃないか?」
冗談が冗談に聞こえない状況が続いた。この状況に喜んでいるのは熱帯由来の裸子植物たちである。アルマが生まれた1億年前は被子植物が広がり始め、彼らは衰退の一途をたどっていた。
裸子植物、被子植物、動物、人間の均衡が崩れ四つ巴の戦いが始まろうとしていた。
アルマが消えて、人はかれの代わりを探した。しかし、闇雲に南極を掘り返すこともできず、見果てぬ夢を追い求めることにも疲れた。
やがて、人々の記憶からアルマは消えた。彼の存在が真実だったのか、幻想だったのか。見た事もない新種の生物は都市伝説としてひっそりと噂の中にその姿をとどめるだけとなった。
都会では満員電車にゆられ、何時間もかけて通勤や通学をする。毎日同じ時刻同じ場所で顔を合わせているはずなのに記憶に無い。そんな人たちがこの国を作っている。
真夏の暑い日。その日も東京は朝から30度を超えていた。電車・バスは窓を締め切り冷房をかけていたが、それでもじわじわと汗が噴出した。こんなに日に毒ガスがまかれても誰も気がつかないかもしれない。
「地獄の窯の蓋が開いたんじゃないか?」
冗談が冗談に聞こえない状況が続いた。この状況に喜んでいるのは熱帯由来の裸子植物たちである。アルマが生まれた1億年前は被子植物が広がり始め、彼らは衰退の一途をたどっていた。
裸子植物、被子植物、動物、人間の均衡が崩れ四つ巴の戦いが始まろうとしていた。