発見

文字数 986文字

 偉大な発見が世の常識を覆す事例は枚挙に暇がない。2つの発見が、太古の地球の姿を変えることとなった。

 1つは『植物』に関する発見である。従来、植物には動物の脳のような意思決定組織はないというのが定説だった。今まで誰も気がつかなかったのも無理はない。すべては人が見ていない部分で行われていたのだから。それは一人の宇宙飛行士の何気ないつぶやきから始まった。
「暗黒の空間に浮かぶ青い地球は、さながら宇宙に浮かぶ脳のようだ。」
 彼は医者だった。その言葉を聴いた同僚の植物学者がこういった。
「地球が脳なら、植物はさしずめ神経細胞といったところか。」
 彼らのたわいもないやり取りがその後、真実と認識されるには、さほど時間はかからなかった。
 地上の植物は根幹にその意思を持ち、地下で密かに意思の疎通を行っていた。考えてみれば、水分の多い地下では微弱な電気信号をやり取りできる。また、根は神経細胞の樹状突起によく似ている。

 2つ目の発見は少々荒唐無稽なものだった。小さな島から大規模な同一種の草食恐竜の集団化石がいくつも見つかったのだ。
「この密集状態から考えて、人工的な飼育環境、つまり牧場があったと思われる。」
 しかし、この発表には重大な問題があった。牧場というからには、飼育していたものが存在するはずである。
 原人説や宇宙人説などさまざまな憶測が飛んだ。しかし、それは突如解決する。化石につけられていた多くの傷と一致する道具が多数のミイラとともに、別の島の、とある鍾乳洞から見つかったからだ。
 そこは、一億年前、太平洋の真ん中に浮かぶ島の地下だった。それも地下2千メートルという深さ。それが一万年前の隆起によって地上に持ち上がり、数年前の巨大地震による地上部分の陥没で偶然に見つかった。
 やがて、学会はこう結論付けた。
「一億年前の白亜紀の巨大恐竜の一部は、孤島に住む地底人の家畜だった。」

 地底人の組織は動物ではなく植物に近かった。筋肉を持った二足歩行の植物。しかし、その脳と思われる部分はあまりにも小さく、道具を作る知能を有しているとはとても思えなかった。おそらく、生命維持しかできなかっただろう。では、それほどの知能はどこにあったのか。学者たちは地球そのものであると結論付けた。彼らは地球の意思を受け取る者という意味としてシナプスと名づけられた。
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登場人物紹介

羽合 富羅(はあい ふら)

農業高校1年で寮暮らし。ジャージ姿。伸長約140cmのチビで地味。植物の声が聞こえる。夢は樹木医。

夏休みを北海道泊村の実家で過ごす。

春馬 瑠真(はるま るま)

富羅の実家の村に移住してきた。身長約180cm。知識はあるが性格は子供。カメレオンを腕に乗せ散歩させている。

夏美(なつみ)

富羅の中学の同級生。スポーツ万能。勘違いから富羅と勉をくっつけようとしている。

弥子(やこ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。土地成金のお嬢様。両性類や爬虫類が嫌い。瑠真を好きになる。

勉(つとむ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。勉強はできるが運動はダメ。夏美のことが好き。

ドクター・春馬

泊村の診療所の女医。元遺伝子治療の研究者。

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