感傷
文字数 1,304文字
「この辺りは、まったく変わらんな。」
伊香保を出発した安蔵は、トラックの荷台で外の景色を見ながらぼそっといった。
「都市は混乱してますがね、田舎は変わりませんよ。ただ、都会から入ってくる人間が増えて、治安は悪くなってますがね。」
部隊長が話す。北海道に向かう一行は、途中で徐々に大きくなっていく。色々な駐屯地からトラックが合流してくる。
「飛行機で行けば早いのに。」
富羅は、長い移動にいい加減飽きてきた。
「応援部隊を集めながらですから。それに、空を行けばついてきているアルマが目立ってしまいます。あと、皆さんに街の現状を見てもらいたい。この交渉によって彼らの運命が決まってしまうのです。高校生にその責任を負わせるのは心苦しいですが、そのために役立ちそうな情報は提供しておきたいという大臣の指示です。」
部隊長が穏やかな口調で富羅に説明してくれた。大臣というのは防衛大臣のことだろう。
新潟へと抜けた。ここからは急遽、船で行くことになった。
「皆さんの状況を報告したところ、大臣からフェリーを使う指示がでました。明日には目的地に着く予定です。」
明らかに役人だろうと思われるスーツ姿の男が説明する。フェリーの駐車場内に自衛隊車両が並ぶ。さすがに、貸し切りだ。
「浴室とレストランは使えません。後で、弁当を配りますので、それまでゆっくりしていてください。」
フェリーのビュッフェを期待していただけにちょっぴり残念だった。カラオケは自由といわれたけど、一人カラオケも寂しい。夜になれば、むさい男どもの宴会場になるかもしれないし。
北海道に新幹線が通ってからフェリーに乗ることは無くなった。この感じ久しぶりだ。
富羅はいつも最下層の雑魚寝部屋にしか泊まったことがない。今回は一等船室だ。
「あ~。ベッドが気持ちいい。」
窓の位置が高い。地平線が遠くに見える。
「この海のどこかにアルマがいるんだ。」
見たこともない、未知生物を想像した。瑠真に似ているのだろうか?それとも恐竜そのものなのか。
いつしか、寝入ってしまった。父は作戦会議にでもいっているのだか、部屋にいない。
「一人ってつまらないな。」
富羅は、いままで一人でいても、退屈だとは思ったことはあるがつまらいと思ったことはなかった。退屈とつまらないとは違う。退屈は一人ですることがなく手持無沙汰なだけだが、つまらないは一人でいること自体がいやなのだ。
「瑠真、居る?」
向い部屋の瑠真に声をかけた。部屋が空いた。
「教授は?」
「打ち合わせ中。」
そっちもか。
「デッキに行かない。」
「いや、寒いのは苦手なんだ。やめておく。」
そうだ、こいつ爬虫類だった。晴ているとは言え、もう秋だ。海の上は寒い。夏美や弥子なら強引に連れだすところだろうが、富羅にはそんな勇気はない。
「入っていい?」
廊下にいるのも変なので、部屋に入った。
「同じつくりだね。」
左右こそ逆になっているが、会い向かい部屋なので全く同じ調度品に、同じ配置だ。
「何か?」
乙女が感傷に浸っているというのに、相変わらずデリカシーのない奴だ。
伊香保を出発した安蔵は、トラックの荷台で外の景色を見ながらぼそっといった。
「都市は混乱してますがね、田舎は変わりませんよ。ただ、都会から入ってくる人間が増えて、治安は悪くなってますがね。」
部隊長が話す。北海道に向かう一行は、途中で徐々に大きくなっていく。色々な駐屯地からトラックが合流してくる。
「飛行機で行けば早いのに。」
富羅は、長い移動にいい加減飽きてきた。
「応援部隊を集めながらですから。それに、空を行けばついてきているアルマが目立ってしまいます。あと、皆さんに街の現状を見てもらいたい。この交渉によって彼らの運命が決まってしまうのです。高校生にその責任を負わせるのは心苦しいですが、そのために役立ちそうな情報は提供しておきたいという大臣の指示です。」
部隊長が穏やかな口調で富羅に説明してくれた。大臣というのは防衛大臣のことだろう。
新潟へと抜けた。ここからは急遽、船で行くことになった。
「皆さんの状況を報告したところ、大臣からフェリーを使う指示がでました。明日には目的地に着く予定です。」
明らかに役人だろうと思われるスーツ姿の男が説明する。フェリーの駐車場内に自衛隊車両が並ぶ。さすがに、貸し切りだ。
「浴室とレストランは使えません。後で、弁当を配りますので、それまでゆっくりしていてください。」
フェリーのビュッフェを期待していただけにちょっぴり残念だった。カラオケは自由といわれたけど、一人カラオケも寂しい。夜になれば、むさい男どもの宴会場になるかもしれないし。
北海道に新幹線が通ってからフェリーに乗ることは無くなった。この感じ久しぶりだ。
富羅はいつも最下層の雑魚寝部屋にしか泊まったことがない。今回は一等船室だ。
「あ~。ベッドが気持ちいい。」
窓の位置が高い。地平線が遠くに見える。
「この海のどこかにアルマがいるんだ。」
見たこともない、未知生物を想像した。瑠真に似ているのだろうか?それとも恐竜そのものなのか。
いつしか、寝入ってしまった。父は作戦会議にでもいっているのだか、部屋にいない。
「一人ってつまらないな。」
富羅は、いままで一人でいても、退屈だとは思ったことはあるがつまらいと思ったことはなかった。退屈とつまらないとは違う。退屈は一人ですることがなく手持無沙汰なだけだが、つまらないは一人でいること自体がいやなのだ。
「瑠真、居る?」
向い部屋の瑠真に声をかけた。部屋が空いた。
「教授は?」
「打ち合わせ中。」
そっちもか。
「デッキに行かない。」
「いや、寒いのは苦手なんだ。やめておく。」
そうだ、こいつ爬虫類だった。晴ているとは言え、もう秋だ。海の上は寒い。夏美や弥子なら強引に連れだすところだろうが、富羅にはそんな勇気はない。
「入っていい?」
廊下にいるのも変なので、部屋に入った。
「同じつくりだね。」
左右こそ逆になっているが、会い向かい部屋なので全く同じ調度品に、同じ配置だ。
「何か?」
乙女が感傷に浸っているというのに、相変わらずデリカシーのない奴だ。