富羅
文字数 605文字
ミーン、ミーン、ミーン。
青い空、緑の大地。北海道の大地は穏やかだった、例年より暑い夏だったが都会の混乱とは無縁だった。もともと裸子植物が松とイチョウぐらいしかないこの島では裸子植物の勢力が拡大しなかった。泊にある原発はもう何年も稼働していない。
農業高校に進学したばかりの富羅は、樹木医になる夢があった。幼いころ、庭のイチョウが枯れかけた際、たまたま調査で旅をしていた樹木医志望の大学生が手当てをしてくれたことがあった。大きさは半分になったが、今でも元気に青々と三角の葉を茂られている。
トントン。
こっちにいる時には、毎朝、そのイチョウを軽くたたいて、音を聞くのが富羅の日課になっていた。
「元気そうだね。」
声をかけると緑の葉がザワザワとする。
「風・・・だよね。」
葉のあいだからのぞく青い空を見上げながらつぶやいた。
幼いころからピアノをしていた彼女には絶対音感があった。そのため、音を聞くだけでイチョウの体調が分かった。耳をあてると太い幹から水を吸い上げる音が聞こえる。ポコポコと甲高い音がする時は、とても元気な時だ。ボコオンボコオンと鈍く低い音がする時は、疲れていて元気がなくなっている時。暑いとドクドクと速く、寒くなるとトクントクンとゆっくりになる。その音は
「きょうは暑いね。」
とか
「今日は日差しがあって気持ちがいいね。」
とか、まるで会話しているかのようだった。
青い空、緑の大地。北海道の大地は穏やかだった、例年より暑い夏だったが都会の混乱とは無縁だった。もともと裸子植物が松とイチョウぐらいしかないこの島では裸子植物の勢力が拡大しなかった。泊にある原発はもう何年も稼働していない。
農業高校に進学したばかりの富羅は、樹木医になる夢があった。幼いころ、庭のイチョウが枯れかけた際、たまたま調査で旅をしていた樹木医志望の大学生が手当てをしてくれたことがあった。大きさは半分になったが、今でも元気に青々と三角の葉を茂られている。
トントン。
こっちにいる時には、毎朝、そのイチョウを軽くたたいて、音を聞くのが富羅の日課になっていた。
「元気そうだね。」
声をかけると緑の葉がザワザワとする。
「風・・・だよね。」
葉のあいだからのぞく青い空を見上げながらつぶやいた。
幼いころからピアノをしていた彼女には絶対音感があった。そのため、音を聞くだけでイチョウの体調が分かった。耳をあてると太い幹から水を吸い上げる音が聞こえる。ポコポコと甲高い音がする時は、とても元気な時だ。ボコオンボコオンと鈍く低い音がする時は、疲れていて元気がなくなっている時。暑いとドクドクと速く、寒くなるとトクントクンとゆっくりになる。その音は
「きょうは暑いね。」
とか
「今日は日差しがあって気持ちがいいね。」
とか、まるで会話しているかのようだった。