中継

文字数 904文字

 富羅と弥子は遅れて、もう一台を片手でささえながら自転車をこぎ到着した。おまわりに見つかったら止められるやつだ。とりあえず、こんな田舎道では警官も走ってない。瑠真の自転車も途中に乗り捨ててあった。
「何だ。仲良し4人組が揃ったか。」
 大作先生は、どこかのんきだ。富羅だけは、任務中に怪我をしたと聞いていたが、他の連中は知らないはずだ。でも、説明するには父の安蔵のことも話さなくてはならない。ここは、黙って置くしかない。

「あはは、先生なあ。いや、元先生か。旅行中に毒蛇にやられてなあ。今、片足動かないんだ。でも、きっと治るさ。これからは空気のいいこっちでリハビリ生活だ。」
 誘拐犯は警察ではなく、海保に連れられていった。
「泊も物騒になったもんだ。」
 先生は温泉旅館でしばらく湯治生活らしい。

 突然の追跡劇で疲れたのか、瑠真は診療所でしばらく休んで帰ることになった。
「一人で置いておくのは危ないなあ。」
 勉はぶつぶつ独り言を言っている。どうにも、名案が浮かばないらしい。誰かの家にといっても無理がある。あんな連中に来られたら、まったく防御できない。しかも、じきに学校が始まる。
 診療所の待合室のテレビをぼんやり見ていると
「番組の途中ですが、ここで緊急記者会見の中継を行います。」
 アナウンサーの言葉に続き、一人の男性がテーブルの前に座る映像が流れた。
「世界中でおきている不可思議な現象について、元古生物研究所所長、春馬教授から話があるようです。」
 4人は驚いた。
「すべては、一体の冷凍された翼竜アルマの発見に始まります。解凍された個体は、進化する細胞を持ち、人を含む全ての動物の進化を吸収し、人類が集めた膨大な知識も吸収しました。そして、逃げました。かれは地球の温暖化によって復活したシナプスと呼んでいる二足歩行する植物たちを使って、世界中の原発を占拠し、主だった都市を破壊しました。今、都市部では老人の失踪事件が相次いでいます。やつらは、増えすぎた人類が地球に害を及ぼすため、人類の粛清を行おうとしています。大地と生きるか、都市で間引かれながら生きるか選択すべきときが来ます。」
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登場人物紹介

羽合 富羅(はあい ふら)

農業高校1年で寮暮らし。ジャージ姿。伸長約140cmのチビで地味。植物の声が聞こえる。夢は樹木医。

夏休みを北海道泊村の実家で過ごす。

春馬 瑠真(はるま るま)

富羅の実家の村に移住してきた。身長約180cm。知識はあるが性格は子供。カメレオンを腕に乗せ散歩させている。

夏美(なつみ)

富羅の中学の同級生。スポーツ万能。勘違いから富羅と勉をくっつけようとしている。

弥子(やこ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。土地成金のお嬢様。両性類や爬虫類が嫌い。瑠真を好きになる。

勉(つとむ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。勉強はできるが運動はダメ。夏美のことが好き。

ドクター・春馬

泊村の診療所の女医。元遺伝子治療の研究者。

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