遺跡
文字数 1,321文字
日本を遠く離れたメキシコの地に何人かの現地人に交じって日本人が集まっていた。軍のヘリから二人の男が降りてきた。
「やあ、ハワイ。」
迷彩服すがたの黒光りする笑顔の若者たちの一人が叫ぶ。
「ジム。何回言えばわかるんだ。先輩はハワイじゃないハアイだ。」
富羅の父親、羽合安蔵のとなりにいる背の高い男が返す。
「Mr.ダサイも元気そうだね。」
「俺は、ダイサク。絶対わざとだろ。」
富羅の父親と小渕沢大作がならんでいる。
「時間が惜しい。作戦の説明は移動しながら伝えるから、さっさと着替えてくれ。」
迷彩服から、メキシコの民族衣装に着替える。
「先輩と一緒の任務って何年ぶりですかね。」
大作が安蔵に語り掛ける。
「娘が産まれる前だからな。15年ぐらいかな。」
大作と安蔵は、自衛隊の特殊部隊に属していた。諜報部員、いわゆるスパイってやつだ。大作は現役だが、安蔵は一線を退いてから原発などの特殊施設の保安任務に就いていた。
「現在、メキシコ政府は国内の遺跡を閉鎖しています。ラグナベルデと距離が非常に近いテオティワカン周辺にやつらの拠点あるとにらんでいます。」
安蔵は、地図と衛星写真を見比べている。
「ラグナベルデの原発付近で多数の木人が目撃されています。」
木人とはシナプスのことだ。
「こんな開けた場所にいて、今まで見つからないのは不自然じゃないのか。むしろ、遺跡ということであればチチェン・イッツァのほうが密林に囲まれている点で適切では。」
二手に分かれて調査することになった。大作はテオティワカンに、安蔵はチチェン・イッツァに向かった。チチェン・イッツァにはセノーテという地下水脈があり、シナプスたちが隠れるには格好の場所だ。
安蔵たちの読み通り、セノーテの穴からシナプスたちが出入りしていた。数日観察したが、普通に暮らしているだけで、原発のほうに行く気配が無い。
「決起した連中とは、違う集団のようだ。」
帰り支度をしていた安蔵の元に、驚愕の一報が届いた。大作のいるテオティワカンチームが戦闘状態になったというのだ。急いで、救援に向かおうとすると、本部から連絡が入った。どうやら、本部からの援軍で、すでに脱出したらしい。すぐに、シティーへ戻れとの命令だ。
メキシコシティーに到着した彼らを待っていたのは、病院のベッドに横たわる大作たちだった。
「今は、麻酔で眠っている。かれらは重症だったが、とりあえず命に別状はない。」
医者の説明に少し安心したのもつかの間、大作は右足を、他のメンバーも腕や内蔵に大きなダメージを受けていた。特に大作は神経をやられているため、二度と右足は動かせないだろうと聞かされた。
テオティワカンは、見通しが良かった。そのため、隠れられる場所も限られていた。そこにはシナプスはいなかったが、神獣組がいた。かれらの潜伏先だったのだ。
今回の作戦の一番の目的は、神獣組にさらわれたと思われる春馬教授を見つけることだった。国連はアルマに対抗するために、名前の元にもなった教授を探していた。主にフランスで研究していた彼は、春馬のフランス語読みでプロフェッサー・アルマと呼ばれていた。
「やあ、ハワイ。」
迷彩服すがたの黒光りする笑顔の若者たちの一人が叫ぶ。
「ジム。何回言えばわかるんだ。先輩はハワイじゃないハアイだ。」
富羅の父親、羽合安蔵のとなりにいる背の高い男が返す。
「Mr.ダサイも元気そうだね。」
「俺は、ダイサク。絶対わざとだろ。」
富羅の父親と小渕沢大作がならんでいる。
「時間が惜しい。作戦の説明は移動しながら伝えるから、さっさと着替えてくれ。」
迷彩服から、メキシコの民族衣装に着替える。
「先輩と一緒の任務って何年ぶりですかね。」
大作が安蔵に語り掛ける。
「娘が産まれる前だからな。15年ぐらいかな。」
大作と安蔵は、自衛隊の特殊部隊に属していた。諜報部員、いわゆるスパイってやつだ。大作は現役だが、安蔵は一線を退いてから原発などの特殊施設の保安任務に就いていた。
「現在、メキシコ政府は国内の遺跡を閉鎖しています。ラグナベルデと距離が非常に近いテオティワカン周辺にやつらの拠点あるとにらんでいます。」
安蔵は、地図と衛星写真を見比べている。
「ラグナベルデの原発付近で多数の木人が目撃されています。」
木人とはシナプスのことだ。
「こんな開けた場所にいて、今まで見つからないのは不自然じゃないのか。むしろ、遺跡ということであればチチェン・イッツァのほうが密林に囲まれている点で適切では。」
二手に分かれて調査することになった。大作はテオティワカンに、安蔵はチチェン・イッツァに向かった。チチェン・イッツァにはセノーテという地下水脈があり、シナプスたちが隠れるには格好の場所だ。
安蔵たちの読み通り、セノーテの穴からシナプスたちが出入りしていた。数日観察したが、普通に暮らしているだけで、原発のほうに行く気配が無い。
「決起した連中とは、違う集団のようだ。」
帰り支度をしていた安蔵の元に、驚愕の一報が届いた。大作のいるテオティワカンチームが戦闘状態になったというのだ。急いで、救援に向かおうとすると、本部から連絡が入った。どうやら、本部からの援軍で、すでに脱出したらしい。すぐに、シティーへ戻れとの命令だ。
メキシコシティーに到着した彼らを待っていたのは、病院のベッドに横たわる大作たちだった。
「今は、麻酔で眠っている。かれらは重症だったが、とりあえず命に別状はない。」
医者の説明に少し安心したのもつかの間、大作は右足を、他のメンバーも腕や内蔵に大きなダメージを受けていた。特に大作は神経をやられているため、二度と右足は動かせないだろうと聞かされた。
テオティワカンは、見通しが良かった。そのため、隠れられる場所も限られていた。そこにはシナプスはいなかったが、神獣組がいた。かれらの潜伏先だったのだ。
今回の作戦の一番の目的は、神獣組にさらわれたと思われる春馬教授を見つけることだった。国連はアルマに対抗するために、名前の元にもなった教授を探していた。主にフランスで研究していた彼は、春馬のフランス語読みでプロフェッサー・アルマと呼ばれていた。