正体

文字数 851文字

 瑠真のことは友達3人に電話で頼んだ。さすがに、シナプスのことはまだ話せないので、親戚が急病で父と見舞いに行くということにした。

「お前は、なぜか植物の気持ちがわかる力が昔からある。世界中にはお前のような人間は何人かいる。お前達が、歩く木と原発で会ったことも知っている。おなじ種族がメキシコで学者たちを監禁している。ただ、迷路のような場所で、彼らの協力なしでは進む事もできない。そこで、なんとか彼らと交信しようとするのだがうまくいかない。そこで、お前にも協力要請があった。」
 話が急すぎて、わからない部分もあった。
「どんな人たちなの。」
「診療所の先生の旦那さんとその仲間達だ。」
 富羅は、やっと納得した。富羅はどうすべきか判断に迷った。
「電話できる?」
 瑠真を診療所に呼び出してもらい、彼の意志を確かめることにした。彼にとって父は、家族というより研究者だった。実際、あまり会いたいという気持ちは持ってなかったようだ。
「母にとっては、大事な人だから助けられるなら、彼女のために。」
 瑠真の言葉を聞いて、さらに困った。瑠真が会いたいということであれば、一も二もなく協力しただろう。しかし、世界の危機の元を作った人だ。でも、ダイナマイトを作ったノーベルが悪い人といえるだろうか。原爆を生み出したアインシュタインを非難できるだろうか。父が、いくら任務のためとは言え、家族に自衛官であることを隠していたショックもあった。
「こないだは御免。友達に化粧させられちゃって。」
「勉に聞いたよ。こっちこそ。あの臭いをかぐと研究所の大人達のことを思い出しちゃうんだ。」
「今度、皆に説明しておくね。」
「いいよ。たまに会うだけだから。でも、富羅はいつも通りがいいな。」
 これって、どういう意味なんだろ。鈍感な富羅は、言葉をそのまま受け止めていいのかわからなかった。

 電話を切ると、彼女は父に
「私にできるかわからいよ。」
 と告げた。取り合えず、現地について自分の目で見てから判断することにした。
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登場人物紹介

羽合 富羅(はあい ふら)

農業高校1年で寮暮らし。ジャージ姿。伸長約140cmのチビで地味。植物の声が聞こえる。夢は樹木医。

夏休みを北海道泊村の実家で過ごす。

春馬 瑠真(はるま るま)

富羅の実家の村に移住してきた。身長約180cm。知識はあるが性格は子供。カメレオンを腕に乗せ散歩させている。

夏美(なつみ)

富羅の中学の同級生。スポーツ万能。勘違いから富羅と勉をくっつけようとしている。

弥子(やこ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。土地成金のお嬢様。両性類や爬虫類が嫌い。瑠真を好きになる。

勉(つとむ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。勉強はできるが運動はダメ。夏美のことが好き。

ドクター・春馬

泊村の診療所の女医。元遺伝子治療の研究者。

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