始末
文字数 901文字
救急の連絡が入ってきた。診察室にエアコンを入れたり、玄関を開けたりと急にあわただしくなった。
救急車が入ってくると同時に、村の防災無線が昼を告げた。
「それじゃ、これで失礼します。」
富羅は、ソファーから立ち上がると隣の診察室に向かって挨拶した。
ドサッ!
富羅は朦朧とする意識の中で、ガラガラとストレッチャーで運ばれて、診療所にしては立派すぎる手術台に乗せられる自分を感じた。
「知られた以上、このまま帰すわけにはいかないわ。悪いけど、すぐ楽になるからね。」
先生たちの会話が聞こえる。
「随分よくしゃべると思ったら、こういうことだったのか。」
富羅は、後悔した。しかし、もう遅い。体が動かない。
「せめて、まともな恋を一度ぐらいしてみたかったな。」
「大丈夫?」
富羅は目を開けた。あたりを見ると、先ほどまで自分の座っていたソファーに横になっている。
「まさか?」
彼女は、自分の体を触った。別に変化はない。部屋の時計を見ると12時5分だった。5分で何かできるとは思えない。
「驚いたわよ。いきなり倒れるんですもの。軽い貧血、いわゆる立ちくらみってやつね。もう少し横になっているといいわ。」
「はあ。」
富羅が聞いたあれは何だったんだろう。救急車のストレッチャーの音を聞いて自分が乗っていると思ったのだろうか?電話が鳴る。
「お忙しいところすみません。今、一人そちらに向かってますが、どうやら自分がガンだって知って動揺しちゃったみたいで。ご家族は承知されているんですが、高齢なのでもう告知をしないで欲しいということでしたので。鎮静剤を打ちましたから少し落ち着いてます。よろしくお願いします。」
どうやら、診療所の会話が聞こえていたようだ。
そういえば、昔から病院とか嫌いだった。あの消毒の臭いもいやだったけど、それ以上にいつか不治の病といわれるんじゃないかと考えながら順番を待っているあの時間が最悪なのだ。
「女の子なんだから、後片付けぐらい手伝ってから帰るものです。」
母にいつもいわれていることだった。出してもらった、麦茶のコップを流しに持っていき、軽く濯いだ。
救急車が入ってくると同時に、村の防災無線が昼を告げた。
「それじゃ、これで失礼します。」
富羅は、ソファーから立ち上がると隣の診察室に向かって挨拶した。
ドサッ!
富羅は朦朧とする意識の中で、ガラガラとストレッチャーで運ばれて、診療所にしては立派すぎる手術台に乗せられる自分を感じた。
「知られた以上、このまま帰すわけにはいかないわ。悪いけど、すぐ楽になるからね。」
先生たちの会話が聞こえる。
「随分よくしゃべると思ったら、こういうことだったのか。」
富羅は、後悔した。しかし、もう遅い。体が動かない。
「せめて、まともな恋を一度ぐらいしてみたかったな。」
「大丈夫?」
富羅は目を開けた。あたりを見ると、先ほどまで自分の座っていたソファーに横になっている。
「まさか?」
彼女は、自分の体を触った。別に変化はない。部屋の時計を見ると12時5分だった。5分で何かできるとは思えない。
「驚いたわよ。いきなり倒れるんですもの。軽い貧血、いわゆる立ちくらみってやつね。もう少し横になっているといいわ。」
「はあ。」
富羅が聞いたあれは何だったんだろう。救急車のストレッチャーの音を聞いて自分が乗っていると思ったのだろうか?電話が鳴る。
「お忙しいところすみません。今、一人そちらに向かってますが、どうやら自分がガンだって知って動揺しちゃったみたいで。ご家族は承知されているんですが、高齢なのでもう告知をしないで欲しいということでしたので。鎮静剤を打ちましたから少し落ち着いてます。よろしくお願いします。」
どうやら、診療所の会話が聞こえていたようだ。
そういえば、昔から病院とか嫌いだった。あの消毒の臭いもいやだったけど、それ以上にいつか不治の病といわれるんじゃないかと考えながら順番を待っているあの時間が最悪なのだ。
「女の子なんだから、後片付けぐらい手伝ってから帰るものです。」
母にいつもいわれていることだった。出してもらった、麦茶のコップを流しに持っていき、軽く濯いだ。