テロ

文字数 798文字

 数年で海岸に近いところは水没する。つまりは、復旧しても無駄になる。こうして、東京、ニューヨーク、香港などの海抜の低い大都市は廃墟となった。人々は被害の少ない、より高台の地方へと都市機能を移そうとした。しかし、次々と起こる不可解な事故により、建設は遅々として進まない。
「まるで、モグラの大群でもいるかのように、工事現場は一晩で穴だらけになる。この国は祟られている。」
 工事関係者は気味悪がって逃げていく。物資は不安定ながらかろうじて流通していたが、いつ道路が陥没するかわからない状況にあった。

 ロシアの永久凍土の溶解は国を東西に分断した。西側は比較的被害が少なかったものの、東側は孤立した。かれらの救済は絶望的だった。現時点ではヨーロッパと南半球だけが被害は局所的だった。
 アメリカでは、職を失った移民たちの暴動が起こり、逃げ出す労働者も増えた。政治機能は正常だったが、生産や治安に関しては停滞してしまった。

 数日後、世界中の政府が隠し続けてきた情報が暴露される事態になった。各国の主要な原子力発電所が相次いで制御不能に落ちいっていたことが公表された。暴走したわけではない。テロだ。何者かに一斉に占拠された。
「われらは、神獣組。主要国の原子力施設のいくつかを占拠した。いつでも暴走させることができる。」
 冷却を止めれば勝手に暴走してくれる。これほど簡単な爆弾はない。逆に、孤立させようとして外部から電力を絶たれることもない。篭城するにはうってつけな場所だ。施設は地下から突如現れた未知の小型生物によっていともたやすく占拠された。植物由来のシナプスの放射線への耐性は、動物とは比べ物にならないほど高い。設備に関しては進化したアルマの脳にインプットされている。すべては、おろかな人間達が無防備に与えてしまった知識だ。
 こうして人類はその地位を最上位から最下位へと一気に転落させた。
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登場人物紹介

羽合 富羅(はあい ふら)

農業高校1年で寮暮らし。ジャージ姿。伸長約140cmのチビで地味。植物の声が聞こえる。夢は樹木医。

夏休みを北海道泊村の実家で過ごす。

春馬 瑠真(はるま るま)

富羅の実家の村に移住してきた。身長約180cm。知識はあるが性格は子供。カメレオンを腕に乗せ散歩させている。

夏美(なつみ)

富羅の中学の同級生。スポーツ万能。勘違いから富羅と勉をくっつけようとしている。

弥子(やこ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。土地成金のお嬢様。両性類や爬虫類が嫌い。瑠真を好きになる。

勉(つとむ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。勉強はできるが運動はダメ。夏美のことが好き。

ドクター・春馬

泊村の診療所の女医。元遺伝子治療の研究者。

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