逃亡

文字数 779文字

 ジャバヤは密かにパイソンを逃がす事にした。翼竜は朝の低い気温が苦手だ。十分日に当たってからでないと動くこともままならない。
「朝になったらみんながお前を始末するといっている。逃げるんだ。」
 ジャバヤが追い立てようとするが、体の大きいパイソンにとってはじゃれているぐらいにしか感じない。この時のパイソンは真っ白な翼竜ではなくなっていた。全身は魚のように銀色のうろこで覆われ、ティラノサウルスのような強靭な後ろ足も持っていた。

 東の空が白み始めた。ベシカの声が聞こえる。ジャバヤは決心した。
「一緒に逃げよう。」
 ジャバヤはパイソンの背中に飛び乗った。パイソンは狩りに行くのだと思い飛び立った。朝の海には上昇気流がない。彼らは海に落ちた。翼竜には鳥のような羽毛はない。そのため、海に落ちれば急激に体温が低下し溺れてしまうものだった。夜が明けたばかりの暗い海では陸から彼らの姿は見る事ができなかった。ベシカたちはジャバヤとパイソンは死んだものと思った。
 しかし、パイソンには魚のようなうろこがあった。それらは水をはじき水の抵抗を減らしたので、彼は自由に泳ぐことができた。彼らは、牧場とは別の方向へ流されていった。

 その後、シナプスの長は地球の意志からのメッセージを受け取った。パイソンは植物の呪縛からのがれるために動物たちが作り出した最強の生物だった。彼も元は普通の翼竜だったが、特殊な遺伝子を持って産まれた。彼は、生きた動物を食らうことで、その動物の進化した能力を発動できる未分化細胞を多数持っていた。ウィンガロンの強靭な翼や、ティラノサウルスの足などをコピーすることで己の体を強化していった。こうして彼は地上の動物では最強の体を手に入れたのだった。植物達は彼が完全に覚醒することを恐れていた。そのため覚醒し始めた彼を極秘裏に始末しようと考えた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

羽合 富羅(はあい ふら)

農業高校1年で寮暮らし。ジャージ姿。伸長約140cmのチビで地味。植物の声が聞こえる。夢は樹木医。

夏休みを北海道泊村の実家で過ごす。

春馬 瑠真(はるま るま)

富羅の実家の村に移住してきた。身長約180cm。知識はあるが性格は子供。カメレオンを腕に乗せ散歩させている。

夏美(なつみ)

富羅の中学の同級生。スポーツ万能。勘違いから富羅と勉をくっつけようとしている。

弥子(やこ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。土地成金のお嬢様。両性類や爬虫類が嫌い。瑠真を好きになる。

勉(つとむ)

富羅の幼馴染で中学まで同級生。勉強はできるが運動はダメ。夏美のことが好き。

ドクター・春馬

泊村の診療所の女医。元遺伝子治療の研究者。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み