卵
文字数 1,261文字
「なんだ、これは?」
アルマの体の中からやわらかな半透明の塊が現れた。中には液体が入っている。よく見ると、奥に何かある。人間だ。
「富羅。」
安蔵が駆け寄る。
「触るな。」
教授が腕を突き出して止める。
「これは、卵だ。彼女はすでに消化されかけている。いま、出せば死ぬぞ。」
塊は日の光を受けて、徐々に膨らみ白く固くなっていった。
「富羅。」
一台の車が島への橋を渡ってきた。卵の周りに夏美と弥子と勉が駆け寄る。
「あの子はアルマと共に死んだ。」
運転席から降りてきた女性に教授が伝える。瑠真の母だ。
「そう。」
彼女は一言いうと、夏美達3人に向かって言葉を続けた。
「富羅は傷ついている。これは私たちがあの子の移植の時に使った方法に似ている。きっと、この中で細胞を再生しているはず。いい、彼女が自分で出てくるまで卵を守るのよ。」
夏美はすっかり固くなった卵に登った。弥子と勉は周りに張り付いた。瑠真の両親は橋を封鎖する。安蔵はどこかへ消えてしまった。
異変に気がついたぬら人たちが島へぞくぞくと集まってくる。
「あの中に富羅ちゃんがいるのかい。」
村の人たちは村中に散った。
ガガガガガー
戦車が一台、橋の前に止まった。
「その塊は破壊する。直ちにそこをどきなさい。」
安蔵の声だ。それは、感情のない棒読みのような調子だった。
ドーン
大砲から轟音がする。
「今のは空砲。威嚇でーす。次は、実弾ですよー。」
しばらくして再びドーンという音がした。
ガラガラガラ
何かが崩れる音がした。
「先輩、まだ電磁波の影響でバグっちゃってますね。」
島への橋が崩れていた。
「大作。相変わらず計算が苦手だな。」
二人は、戦車をおりると港に向かった。一艘の漁船に乗る。海岸をみると、何艘もの漁船が周囲を取り巻いていた。安蔵と大作を乗せた船がその外側に到着した。
「はーい。そこをどいて。道を開けてくれないと、自衛官が進めないでしょ。そしたら、困るっしょ。」
安蔵たちが押し問答しているうちにも、ほかの街の漁船も集まってくる。自衛隊も海保も船が大きすぎて座礁してしまうため近づけない。ボートは漁船に阻まれて進めない。
「エンジンがいかれちまって。これも、あの花火の影響ですかね。」
「なら、仕方ありませんね。急いで直してくださーい。」
「へーい。」
「責任者いますか?いないんですか?野次馬はどいてください。」
島に近づこうとする自衛官を村に駐在する警官が止める。
「自衛隊といえども指示がでてないものは通すわけにはいきません。」
「危ないですから、下がって。」
村の役場の人が、落ちた橋を封鎖する。
「怪我人が出たら、責任問題になります。下がって。」
しだいに、村の女性たちが集まってきた。
「こら、触ったらセクハラで訴えるからね。」
いや、どうみても誰もさわらないだろうと思うばあちゃんたちまでが騒ぐ。
「村の子供たちが体張ってんだ。力になるのが人間だろ。」
アルマの体の中からやわらかな半透明の塊が現れた。中には液体が入っている。よく見ると、奥に何かある。人間だ。
「富羅。」
安蔵が駆け寄る。
「触るな。」
教授が腕を突き出して止める。
「これは、卵だ。彼女はすでに消化されかけている。いま、出せば死ぬぞ。」
塊は日の光を受けて、徐々に膨らみ白く固くなっていった。
「富羅。」
一台の車が島への橋を渡ってきた。卵の周りに夏美と弥子と勉が駆け寄る。
「あの子はアルマと共に死んだ。」
運転席から降りてきた女性に教授が伝える。瑠真の母だ。
「そう。」
彼女は一言いうと、夏美達3人に向かって言葉を続けた。
「富羅は傷ついている。これは私たちがあの子の移植の時に使った方法に似ている。きっと、この中で細胞を再生しているはず。いい、彼女が自分で出てくるまで卵を守るのよ。」
夏美はすっかり固くなった卵に登った。弥子と勉は周りに張り付いた。瑠真の両親は橋を封鎖する。安蔵はどこかへ消えてしまった。
異変に気がついたぬら人たちが島へぞくぞくと集まってくる。
「あの中に富羅ちゃんがいるのかい。」
村の人たちは村中に散った。
ガガガガガー
戦車が一台、橋の前に止まった。
「その塊は破壊する。直ちにそこをどきなさい。」
安蔵の声だ。それは、感情のない棒読みのような調子だった。
ドーン
大砲から轟音がする。
「今のは空砲。威嚇でーす。次は、実弾ですよー。」
しばらくして再びドーンという音がした。
ガラガラガラ
何かが崩れる音がした。
「先輩、まだ電磁波の影響でバグっちゃってますね。」
島への橋が崩れていた。
「大作。相変わらず計算が苦手だな。」
二人は、戦車をおりると港に向かった。一艘の漁船に乗る。海岸をみると、何艘もの漁船が周囲を取り巻いていた。安蔵と大作を乗せた船がその外側に到着した。
「はーい。そこをどいて。道を開けてくれないと、自衛官が進めないでしょ。そしたら、困るっしょ。」
安蔵たちが押し問答しているうちにも、ほかの街の漁船も集まってくる。自衛隊も海保も船が大きすぎて座礁してしまうため近づけない。ボートは漁船に阻まれて進めない。
「エンジンがいかれちまって。これも、あの花火の影響ですかね。」
「なら、仕方ありませんね。急いで直してくださーい。」
「へーい。」
「責任者いますか?いないんですか?野次馬はどいてください。」
島に近づこうとする自衛官を村に駐在する警官が止める。
「自衛隊といえども指示がでてないものは通すわけにはいきません。」
「危ないですから、下がって。」
村の役場の人が、落ちた橋を封鎖する。
「怪我人が出たら、責任問題になります。下がって。」
しだいに、村の女性たちが集まってきた。
「こら、触ったらセクハラで訴えるからね。」
いや、どうみても誰もさわらないだろうと思うばあちゃんたちまでが騒ぐ。
「村の子供たちが体張ってんだ。力になるのが人間だろ。」