似た者
文字数 879文字
村の青年ではない。村の学生ならよく知っている。
「だれ?」
富羅は初めて会う青年に恐怖を覚えた。
「瑠真。今年、村に移住した。君がほぼ毎日ここに来るのを見ていた。ちょうどこの子の散歩の時間なんだ。」
彼はカメレオンを指した。
「カメレオンの散歩?」
富羅は腰が引けたまま、納得いかないように頭を傾けた。
「こいつが、どうしても生餌を食べたいというんでね。」
春馬瑠真。人の事はいえないが変わった名前だ。
「私は羽合富羅。あなたカメレオンとしゃべれるの?」
こいつ頭大丈夫か?と、富羅は思った。
「ハワイ・フラってギャグ?」
「ハワイじゃなくてハアイ。そっちこそハルマルマって何?」
初対面の人にはいつもこうなる。いちいち名前を訂正するところから会話が始まるので、人と話をするのが嫌になる。だから樹木医を選んだのだ。
「ごめん。お互い、親のつけた名前で苦労するね。」
屈託の無い爽やかな笑顔でそういう彼に悪気は感じられない。
「そうだな。」
このまま、立ち去るのも逃げるようで癪に障る。富羅は勇気をだして座りなおした。
「カメレオンとしゃべれるかって質問だったね。」
瑠真は明るい表情で答えた。
「しゃべれない。でも、理解しあえる。」
富羅はますます混乱した。
「動物たちの考えがわかるといえばいいのかな。」
彼は説明に困った様子だった。富羅は理解した。彼女が木々の気持ちがわかるのと同じなのかもしれない。
「ふ~ん。樹木医か。あいにく僕は、植物には興味がわかないな。あいつらはまるで自分たちが地球の王のように他の生物を見下しているような気がしてならないんだ。」
「そんなことない。」
富羅は立ち上がるとベーと舌を出して、振り向いて帰りかけた。堤防から降りて、そっと振り返る。あいつは、左腕にいる緑色のものに何か語りかけている。
「変なやつ。」
その後、数日はまたあいつに会うかもしれないと、堤防にいく気がしなかった。
「お母さん。今年、村に来た春馬って人知ってる?」
富羅はとりあえず、母親から情報を得ようと考えた。
「だれ?」
富羅は初めて会う青年に恐怖を覚えた。
「瑠真。今年、村に移住した。君がほぼ毎日ここに来るのを見ていた。ちょうどこの子の散歩の時間なんだ。」
彼はカメレオンを指した。
「カメレオンの散歩?」
富羅は腰が引けたまま、納得いかないように頭を傾けた。
「こいつが、どうしても生餌を食べたいというんでね。」
春馬瑠真。人の事はいえないが変わった名前だ。
「私は羽合富羅。あなたカメレオンとしゃべれるの?」
こいつ頭大丈夫か?と、富羅は思った。
「ハワイ・フラってギャグ?」
「ハワイじゃなくてハアイ。そっちこそハルマルマって何?」
初対面の人にはいつもこうなる。いちいち名前を訂正するところから会話が始まるので、人と話をするのが嫌になる。だから樹木医を選んだのだ。
「ごめん。お互い、親のつけた名前で苦労するね。」
屈託の無い爽やかな笑顔でそういう彼に悪気は感じられない。
「そうだな。」
このまま、立ち去るのも逃げるようで癪に障る。富羅は勇気をだして座りなおした。
「カメレオンとしゃべれるかって質問だったね。」
瑠真は明るい表情で答えた。
「しゃべれない。でも、理解しあえる。」
富羅はますます混乱した。
「動物たちの考えがわかるといえばいいのかな。」
彼は説明に困った様子だった。富羅は理解した。彼女が木々の気持ちがわかるのと同じなのかもしれない。
「ふ~ん。樹木医か。あいにく僕は、植物には興味がわかないな。あいつらはまるで自分たちが地球の王のように他の生物を見下しているような気がしてならないんだ。」
「そんなことない。」
富羅は立ち上がるとベーと舌を出して、振り向いて帰りかけた。堤防から降りて、そっと振り返る。あいつは、左腕にいる緑色のものに何か語りかけている。
「変なやつ。」
その後、数日はまたあいつに会うかもしれないと、堤防にいく気がしなかった。
「お母さん。今年、村に来た春馬って人知ってる?」
富羅はとりあえず、母親から情報を得ようと考えた。