冷凍
文字数 997文字
一億年後、南極の氷の中から、未知の古代生物の氷付けの巨体が発見された。最初は黒っぽい大きな塊に見えた。氷の中をスキャンして解析した結果、白亜紀の翼竜であることがわかった。巨大な羽と、強靭な足を持ち、今まで発見されたどの翼竜よりも大きかった。氷を通してではあったが、それはまるで先日まで生きていたかのような生々しさがあった。
「生き返るかもしれない。」
世界中の生物学者は、なんとか解凍する方法はないかと考えた。すでに動物の冷凍保存の技術は実用化されている。しかし、問題は解凍方法の難しさにあった。冷凍する場合は、外側つまり表皮から内蔵の順に凍っていく。解凍にはその逆の順序、つまり内蔵から解凍しなくてはならない。生命維持に必要な循環器系統が働かなければ、解凍した部分はすぐに腐り始めるだろう。
学者たちは、電子レンジにヒントを得て、特殊なマイクロ波を照射する方法を思いついた。これなら、内側の狙った部分から順次解凍する事ができる。だが、すぐに次の問題が生じた。マイクロ波が氷の表面で反射されしまうのだった。それはあたかも電子レンジに金属を入れたようなものである。失敗すれば氷ごと破壊してしまう恐れがあった。
科学というのは偶然に助けられて進歩する事は珍しくない。その日は、うだるように暑かった。解凍方法を探していた研究者たちもあまりの暑さに休憩した。
「ぷーん。」
かれらの周りに甲高いモスキート音がした。蚊だ。
「うるさいなあ。」
一人の若い研究者が氷にとまった一匹を叩き潰す。蚊はたらふく血を吸った後だったのか、飛び上がる事も無くつぶれた。
休憩も終わり、実験を再開したとき一筋のマイクロ波が氷をつきぬけて観測された。それは、潰れた蚊によって氷につけられた血液によるものだった。血液が氷の表面の屈折率を変えていたのだ。
喜んだのもつかの間。血液はすぐに固まり、氷との間に空気の層ができてしまう。彼らは考えた。常に血液を流していればいいのではないかと。それには大量の血液がいる。血液には型があり、不用意に混ぜ合わせれば凝固して沈殿物が生じてしまう。さらに、動物愛護団体に騒がれるのも厄介だ。
「古くなった輸血用の血液を使おう。」
これならば、型も解っているし廃棄されるものだから苦情もでないだろう。こうして、人間の血液をかけ続けながら翼竜は心臓から順に解凍されていった。
「生き返るかもしれない。」
世界中の生物学者は、なんとか解凍する方法はないかと考えた。すでに動物の冷凍保存の技術は実用化されている。しかし、問題は解凍方法の難しさにあった。冷凍する場合は、外側つまり表皮から内蔵の順に凍っていく。解凍にはその逆の順序、つまり内蔵から解凍しなくてはならない。生命維持に必要な循環器系統が働かなければ、解凍した部分はすぐに腐り始めるだろう。
学者たちは、電子レンジにヒントを得て、特殊なマイクロ波を照射する方法を思いついた。これなら、内側の狙った部分から順次解凍する事ができる。だが、すぐに次の問題が生じた。マイクロ波が氷の表面で反射されしまうのだった。それはあたかも電子レンジに金属を入れたようなものである。失敗すれば氷ごと破壊してしまう恐れがあった。
科学というのは偶然に助けられて進歩する事は珍しくない。その日は、うだるように暑かった。解凍方法を探していた研究者たちもあまりの暑さに休憩した。
「ぷーん。」
かれらの周りに甲高いモスキート音がした。蚊だ。
「うるさいなあ。」
一人の若い研究者が氷にとまった一匹を叩き潰す。蚊はたらふく血を吸った後だったのか、飛び上がる事も無くつぶれた。
休憩も終わり、実験を再開したとき一筋のマイクロ波が氷をつきぬけて観測された。それは、潰れた蚊によって氷につけられた血液によるものだった。血液が氷の表面の屈折率を変えていたのだ。
喜んだのもつかの間。血液はすぐに固まり、氷との間に空気の層ができてしまう。彼らは考えた。常に血液を流していればいいのではないかと。それには大量の血液がいる。血液には型があり、不用意に混ぜ合わせれば凝固して沈殿物が生じてしまう。さらに、動物愛護団体に騒がれるのも厄介だ。
「古くなった輸血用の血液を使おう。」
これならば、型も解っているし廃棄されるものだから苦情もでないだろう。こうして、人間の血液をかけ続けながら翼竜は心臓から順に解凍されていった。