出会い
文字数 553文字
泊には富羅の両親が暮らしている。彼女はいつもは学校の寮に住んでいたが、久しぶりに夏休みに帰ってきていた。父親は泊の原発での下請けをしていたが、停止している現在は仕事がなく月の半数はパートに出ている。
父親は退職したら富良野で農業をするのが夢だった。その思いから娘の名前を富羅にしたくらいだ。もしこのまま原発が稼働しなければやがてリストラされてしまうだろう。その時に困らないようにと、少しでも慣れるために今は農家の手伝いに出ていた。
富羅は暇なときは泊漁港の堤防から海を眺める。腰を降ろして、広い海と優雅な海鳥の群れを見ていると学校のいやなことを忘れる。
「また、海を眺めてるのかい。」
後ろから少し高い男の声がした。富羅は答えることも振り返ることもせずに海を眺めている。地元の青年だろうか。富羅の隣に腰を降ろす。
「えっ!?」
富羅は彼の左腕に乗っている緑色の物体を見て思わず飛びのいた。見た事も無い生物が彼の腕に捕まっていた。
「ト・カ・ゲ?」
そいつは、突き出た目をグルグル動かしている。
「カメレオンさ。おチビちゃん。」
彼は左腕を富羅のほうに突き出した。富羅はムッとした。それは、カメレオンがきらいだったからではない。150センチに満たない彼女は身長の事をいわれるのがいやだった。
父親は退職したら富良野で農業をするのが夢だった。その思いから娘の名前を富羅にしたくらいだ。もしこのまま原発が稼働しなければやがてリストラされてしまうだろう。その時に困らないようにと、少しでも慣れるために今は農家の手伝いに出ていた。
富羅は暇なときは泊漁港の堤防から海を眺める。腰を降ろして、広い海と優雅な海鳥の群れを見ていると学校のいやなことを忘れる。
「また、海を眺めてるのかい。」
後ろから少し高い男の声がした。富羅は答えることも振り返ることもせずに海を眺めている。地元の青年だろうか。富羅の隣に腰を降ろす。
「えっ!?」
富羅は彼の左腕に乗っている緑色の物体を見て思わず飛びのいた。見た事も無い生物が彼の腕に捕まっていた。
「ト・カ・ゲ?」
そいつは、突き出た目をグルグル動かしている。
「カメレオンさ。おチビちゃん。」
彼は左腕を富羅のほうに突き出した。富羅はムッとした。それは、カメレオンがきらいだったからではない。150センチに満たない彼女は身長の事をいわれるのがいやだった。