静寂
文字数 961文字
「政府も隠し続ける事が難しいと思ったんだろう。」
中継を見ながら勉がつぶやく。
「でも、どれだけの人が信じるかしら。」
弥子の意見ももっともだ。最近の政府は首相を筆頭に、みえみえの嘘をつく。忖度といえば罪にならないと思っているかのようである。
富羅たちが生まれる前に、新興宗教による出家という名の神隠しが問題になったらしい。そんなこともあって、早々に発表したのかもしれない。
信じようが、信じまいが、事は起こる。子供というのはつくづく非力だと思い知らされる。だが、子供ゆえに柔軟に現状を受け入れることもできるのである。
にしても、大作先生のお陰で助かった。実に、いいタイミングだった。いや、良すぎる。瑠真の警護に来たのかもしれない。しかし、正義も味方ぶっても自衛官なんて所詮は政府の味方だ。警戒するにこしたことはない。
中継は5分ほどで終わった。瑠真と一緒に診療所を出ると、村の中が随分と閑散としている。
「旅行者がいない。」
最初に気がついたのは夏美だ。村の観光客はその大半が色々な国のスパイだったということだろうか?教授の出現で、一斉にターゲットを変更したのだろうか。
おそらく、今まで父親らしいことをしてこなったに違いない教授であったが、ここにきて子供を守るという親としての最高の責務を果たしたことになるのだろう。
やがて、勉、夏美、弥子の3人はそれぞれの学校へと戻った。休学中の富羅だけが、村に残る。午前中こそ港には漁で水揚げされた魚をさばく人たちでにぎわっているものの午後になると誰も見かけることもない。波の音と、木々のざわめき、それに時折、海鳥達の鳴き声がするぐらいだ。
「この村って、こんなに静かだったんだっけ。」
去年まで村に住んでいたはずなのに、急に寂れたように感じる。人と関わりたくなくて樹木医を目指していたが、本当は自分の気持ちから逃げていたのかも知れない。
北海道の冬は早い。村人達が冬支度を始めようというころ、
「広島に行く。今度は春馬君も一緒だ。」
安蔵は帰ってきて、富羅に旅支度をさせた。動物達の世話を近所に頼み、その日のうちに出発した。
「アルマの居場所がわかった。やつは今、瀬戸内の島に潜伏している。春馬君のお父さんを追って呉の近くに来た事までわかった。」
中継を見ながら勉がつぶやく。
「でも、どれだけの人が信じるかしら。」
弥子の意見ももっともだ。最近の政府は首相を筆頭に、みえみえの嘘をつく。忖度といえば罪にならないと思っているかのようである。
富羅たちが生まれる前に、新興宗教による出家という名の神隠しが問題になったらしい。そんなこともあって、早々に発表したのかもしれない。
信じようが、信じまいが、事は起こる。子供というのはつくづく非力だと思い知らされる。だが、子供ゆえに柔軟に現状を受け入れることもできるのである。
にしても、大作先生のお陰で助かった。実に、いいタイミングだった。いや、良すぎる。瑠真の警護に来たのかもしれない。しかし、正義も味方ぶっても自衛官なんて所詮は政府の味方だ。警戒するにこしたことはない。
中継は5分ほどで終わった。瑠真と一緒に診療所を出ると、村の中が随分と閑散としている。
「旅行者がいない。」
最初に気がついたのは夏美だ。村の観光客はその大半が色々な国のスパイだったということだろうか?教授の出現で、一斉にターゲットを変更したのだろうか。
おそらく、今まで父親らしいことをしてこなったに違いない教授であったが、ここにきて子供を守るという親としての最高の責務を果たしたことになるのだろう。
やがて、勉、夏美、弥子の3人はそれぞれの学校へと戻った。休学中の富羅だけが、村に残る。午前中こそ港には漁で水揚げされた魚をさばく人たちでにぎわっているものの午後になると誰も見かけることもない。波の音と、木々のざわめき、それに時折、海鳥達の鳴き声がするぐらいだ。
「この村って、こんなに静かだったんだっけ。」
去年まで村に住んでいたはずなのに、急に寂れたように感じる。人と関わりたくなくて樹木医を目指していたが、本当は自分の気持ちから逃げていたのかも知れない。
北海道の冬は早い。村人達が冬支度を始めようというころ、
「広島に行く。今度は春馬君も一緒だ。」
安蔵は帰ってきて、富羅に旅支度をさせた。動物達の世話を近所に頼み、その日のうちに出発した。
「アルマの居場所がわかった。やつは今、瀬戸内の島に潜伏している。春馬君のお父さんを追って呉の近くに来た事までわかった。」