第36話 新聞よ、さらば

文字数 968文字

 今日、1つの歴史に幕を下ろしました。淋しくもあり、仕方なくもあり。老後の生活って、こういうことの繰り返しなんでしょうか。

 夫と結婚して以来、ずーっと続けていた新聞の定期講読を先ほど解約した。浮気することなく、ずっとA新聞。私の実家は違う新聞だったので、最初は文字や記事の書き方に違和感があったっけ。社宅時代には、美術館の招待券もよくいただいた。ときには、出版された本も購入したなぁ、漫画だったけど。

 ウチの場合、ポストに入った新聞を取るのは、誰とは決まっていない。それでも7割ほどは私だったが。今朝、起き抜けにいろいろやることがあったので、新聞を昼までポストに入れっぱなしだった。滅多にないこと。いつもなら夫が午前中に取っているはずなのだが、今日は違った。昼になり夫が新聞をリビングに持ってきたとき

「新聞読む?もう止めてもいいかなと思って」

いつになく穏やかな物言いだ。こんなときの夫の腹は既に決まっている。
『止めたいから賛成してくれ』
私は深読みしてしまった。
『私が新聞を取りに行くのを待っていたが、昼まで気配が無い。ならば、止められるのではないか』
夫は私の行動をよく読む。考え過ぎ?とりあえずは不覚。

 まあまあ。私が読むのは三面記事、週刊誌の下段広告、ついでに株価辺りくらいだったので、解約には二つ返事をした。意に沿った後の夫は、顔色こそ変えないが、私に対するあたりがしばらく穏やかに見える。別に迎合したわけじゃない。私はそんな青臭いことは、とうの昔に辞めている。新聞を見ない日だって何度もあった。これからはネットやテレビで充分だと判断した。それなのに何故だか社会から置いていかれる不安な気持ちがよぎった。

RRRRR……
「〇〇丁目〇番地のariayuです。長い間お世話になりましたが解約をお願いしたくお電話しました。つきましては、そちらのご都合のいい日で構いませんので、新聞を止めてください」

「ariayu様ですね。こちらこそお世話になり、有難うございました。明日よりお止めすることが出来ます。今月分はサービスさせていただきます」

ああ、いい人だ。何か惜しいことしたかな。虚しさが襲ってきた。

 当たり前のように、取っていた新聞。私たち昭和世代にとって新聞や固定電話は生活の一部その物ですよね。次は固定電話いらないと言いだしかねないなー。
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