第44話 ガタ

文字数 911文字

身体(からだ)にガタがきちゃって……」という言葉、使います?言葉そのものは使わなくなっても、内容はわかりますよね。

 私が腎臓癌を患ったのは、51歳のとき。それまでは全く病院と無縁だったわけではないが、どちらかと言えば健康体だったと思う。40代のころ、少し疲れた日に美容室へ行ったときのこと。「疲れたなー。もう歳かな」と漏らしたら

「その歳で、そんなこと言うもんじゃない」

と年上の美容師に言われた。今思えば、疲れていただけかもしれなかったが、それは歳のせいではなく、ただの疲労だったのだろうと振り返る。年齢からくる疲れってそんなもんじゃない。

 大病を患ったが、予後はわりと順調に回復していると思っていた。が、甘かった。腎臓の影響はボディブローのようにジワジワと迫ってくる感じ。ここにきて坂道を()うように身体の疲れが早くなった。今までのように動けていても、その後の疲れがなかなか取れない。私も少しは学習するので、動きを緩めるたり、時間を短くしたり……
この動きの流れが『老い』であり『ガタ』なのだと自覚する。

 昨日から、歩くときに左足の指が痛い。今に始まったことではなく時々ある痛み。でも、中指か薬指のどちらが痛いのかわからない。怪我をしているなら目で見てわかるが、歩いているときにしか痛みが出ないので、手で押さえてみてもわからない。原因は外反母趾だと薄々は分かる。そう思うと、コレもひとつのガタだと諦め、痛みが治まるまで歩きを緩める。

 最近の調理時間は、子どもたちがいたころに比べ随分短くなった。品数が減ったとも言えるが、それよりも長く立っていられなくなった。疲れをおかまいなしに立ち続けると、腰が固まった感覚になり、座ったときに痛みが走る。コレもしばらく経てば、治まる痛み。

 と言うわけで私はアラ還の今、複数の痛みというか、不調を抱える身となった。悲観しているわけではない。『歳をとる』ってこういうことだとしみじみ思う今日このごろなのだ。

 年齢を感じるのは人それぞれだと思います。アラ還だって、飛んだり跳ねたりしている人は数え切れないほどいるでしょう。でも、あるとき「あら?」と感じるようになったら、自愛を始めることを、お勧めします。
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