第40話 老たち

文字数 896文字

 衰えたなと思う瞬間は人それぞれだと思います。「年にはかないませんわ」とか「よる年波に勝てなくて」などと言っても、何ら違和感の無いお年頃。でも、それは少し前まで、言葉だけのひとり歩きだと思っていました。ところが……

 夜中、一瞬目覚めたときに寝返りを打とうとした。『あれれ、身体が重くて動かし辛いなぁ』と思いながらゴロリ。もちろん太ったわけではない。ふと義母が動けなくなり、床擦れが出来たときのことが頭をよぎった。『こんな感覚で動けなかったの?』

 当時、認知症を患っていた義母は、日に日に横になる時間が増え、遂には寝返りが打てなくなった。ずーっと同じ場所に体重がかかる。御多分に洩れず、義母も尾骶骨辺りに床擦れが出来た。一度出来ると、寝たきりの人は完治が難しい。義母も最期まで治らなかった。

 朝、目覚めたときにも夜中の動き辛い感覚を覚えていた。『1回だけのことでありますように』と思いながら手指、肘の関節を動かす。そして起きるときは、必ずうつ伏せから起きる。腰に負担を与えないためだ。コレはテレビの情報で知り、実行している。

 先日、同じ歳の友人とLINEで話した。老化の具合は私とどっこいどっこい。友人が気をつけていることは、階段の昇り降りには必ず手すりを持って、急がない。他には靴下を履くときは座って履く。『ばあさんみたいじゃん』などと軽口を叩いたものの、実は私もやっていた。お互いが共通に思ったことは『今のうちに老後の動作に慣れておく』ということだ。身体が動かし辛くなってからでは、不自由さが増すのではないかと思って。

 あらあら、いつからこんなになってしまったの? 改めて振り返ると少し切ない。きっかけは、いろいろな動作のつまずき。手も足も肩も腰も。『なんか変』『ちょっと痛いかも』と何もしていないのに感じる違和感を少しずつ感じ取りながら、ケアやサポート。これからも体力の衰えに抗おうとせず、前向きな対応で臨んでいきたい。

 今や私の周りは、孫のいる友人ばかりです。自他共に『おばあちゃん』。
孫のいない私は、この点だけは、まだ違和感ありありです。








コロナ禍は老化を早めてくれた出来事だと思います
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