第58話 Kちゃん

文字数 905文字

 昨日の続きです。
Kちゃん宅でランチを食べることになったきっかけは随分前に「新しい食器棚を買ったから見においで」というお誘いがあったから。コロナの緊急事態宣言も明け、大手を振って?の訪問でした。

 以前よりもキッチンは明るくなっていた。白い食器棚のせいかもしれない。奥行が狭くなった分、空間が広くなっていた。腰の位置よりも少し高い所に、高級電子レンジ、バーミキュラのライスポットが鎮座。ここまで書くと、さぞかし料理にこだわりがあるとお思いだろう。実は逆。

 Kちゃんは、お肉全般食べられない。カレーの肉は鶏モモだったけど、もちろん食べていない。嫌いなのだ。幼いころは脂身も食べることができていたらしい。ある時、脂身を食べ過ぎて……以来受け付けなくなった。過ぎたるは及ばざるが如し。

 Kちゃんには成人した男の子が2人いる。上の子は同居。社会人になってから外食してくるらしく、Kちゃんの料理を食べなくなったとのこと。ある日、ハンバーグを作るから食べるかと聞いたら「キーマカレーにしてくれ」と言われたらしい。以前バーミキュラで作った煮込みハンバーグが美味しくなかったため、拒否されたと。どんな味やったんや?私とTさんは、その味の想像がつかず不思議に思った。

 Kちゃんは味見をしない。頑なに調理器具でなんとか美味しい料理を作ろうとしている表れが、バーミキュラなのだ。レシピ通りに食材や調味料を入れれば、美味しくできるはず。間違いではないと思う。AIの時代だ。味覚の匙加減だってなんとかしてくれる利器のはずだと。それなのにハンバーグが不味かったとは何ごと?

 Kちゃんのご主人は辛口。出された料理にダメ出しをよくするという。それでも結婚30年越え。胃袋が掴めていなくても、円満?な家庭はできる証拠がココにある。Kちゃんは苦手な料理の話を明るく笑い飛ばす。メゲることもあるだろうが、諦めず次の手を変えキッチンに立つ。こんな前向きな所が気に入っているんだろうな、ご主人は……と温かい気持ちになった。

 包丁も定期的に研いでもらっているKちゃん。電子レンジはヘルシオ、トースターはアラジンです。道具は完璧。あとは使いこなせばいいだけ。
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