第21話 ぜんぜん

文字数 917文字

 夫の帰宅日も、ほぼ1日気兼ねなく過ごすことができました。さてさて、これからの私たちに変化はあるのか。少しの期待を抱きつつ、帰りを待ちました。

 夫が10泊11日のお遍路を終え帰宅した。行きは最寄り駅まで歩いて行ったが、帰りは従兄弟の奥さんが車で送ってくれた。玄関先で挨拶。

「お世話になりました。楽しく行ってこられて良かったですね」と私。

「いや〜長いこと寂しい想いをさせちゃって、すみませんでしたね〜」と従兄弟。

『いやいや、そんなこと、ないない』と心の声で返事する私。

表向きには苦笑いが出ていたかもしれない。ま、夕闇に任せて気付くこともなかっただろうが。車を運転してきたのは奥さん。夫と同じ歳だから私よりも少し上だ。聞きたかったな。奥さんの日常。

『10日間、何をされていたの?貴女も何処かへ旅行した?それとも……』

 夫と従兄弟がお遍路することになったのは、この奥さんが行けなくなったからだ。つまり、夫は奥さんの代わり。気になる。奥さんの行けなかった理由が凄く気になる。そんな理由を今更聞いたところで何もならないが、私の好奇心がワラワラとうるさく湧き上がってきた。普段会話の少ない夫婦の話題として、コレは機を逃した物。たとえ夫に投げかけても、お茶を濁されるのは目に見えている。まぁ、いいか。済んでしまったことだ。忘れよう。

 帰宅後の夫に変化はあったか?ぜんぜん。何を以ってそう言い切れるか。

①夫から私に挨拶するようなことはない (「おはよう」はいつも私から )

②私に土産を買ってこない ( 実家の両親には『鳴門金時パイ』 )

③リビングの観葉植物の位置を邪魔だと言わんばかりに足で寄せた

前と一緒じゃん。何も変わらないじゃん。ただの旅行だったのか。まぁ、いいけど。

 ある意味、私たち夫婦は似た者同士だ。お互いが似ているが為に反発しあう。だから、余計なことを言ってはいけない。わかっているから。似て非なる者同士。でも、空気になってしまったから、必要不可欠な存在。嫌いでも好きでもない。情が移るってこういうことでもあると思うのだが、いかが?

 お若い人、理解できますか?この関係。もちろん紆余曲折があった上で築かれたことではありますが……
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