第48話 不慮の……

文字数 974文字

 家の中で寛いでいる時間を壊されました。私が根に持つタイプかどうかを試されているんじゃないかと思うようなことが時々あります。

 日々の暮らしの中で不安や悩みがないとは言えないが、今はわりと穏やかな方だと思う。夫の定年で『毎日サンデー』になったが、近ごろは気にならなくなった。好きなタイミングでいろいろなことをやれている。長続きすることを願うばかり。

RRRRR……

 電話番号を見ると050から始まっていた。大抵がセールス。分かってはいるが、いつも一応出ることにしている。「はい、ARIAYUです」

「奥さまですか?不用品を買い取らせていただいている会社なんですが、ご不要な品物はございませんか?1点でも構いません。取りに伺います。こちら広く商売をさせていただいている会社なんですが、そちらの地域に周知いただくためにお電話かけさせてもらっています」

言葉使いは、なんとなく丁寧に聞こえた。でも、この手の内容の話を私はいつもこのように断る。

「お宅に限らず、同じような内容のお電話をいただきますが、全て断らせていただいていますので、申し訳ないですが……」

と言葉尻を濁して応えれば、大半は「そうですか。わかりました」で終わるのだが、この相手はそれでもお願いできないかと食い下がってきたので

「ごめんなさい。お断りします」

とピシャリと言った。そうしたら、返事もよこさず

PPPPP……

 切りやがった。おい!広く商売している会社?こんな態度でお仕事できるなんて思うなよ。丁寧な言葉使いとは打って変わったこの電話の切り方に、私の穏やかな気持ちは、ぶち壊された。

 相手はどのような状況で電話をかけているのかわからないが、失礼にもほどがある。ノルマがあって急かされているのか?相手を哀れな者に仕立て、気持ちを鎮めようとしたが、収まらない。

 先日、東京の電車内で身勝手極まりない事件が起きた。加害者以外は突然の出来事。不慮は、時と場所を選ばない。自分の環境は自分で護り、対応する他ない。

 生きている間は、大なり小なり嫌なことがあります。でも多くは自分次第でなんとかなると思いますが、不慮だけは、どうしようもないです。諦めきれない怒りであっても収めなくてはいけないときがあります。これを試練という言葉で置き換えるには、人間ができていないと。私は、まだまだ怒りを抑えられない凡人です。

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