第27話 結婚記念日

文字数 871文字

 昨日は私たち夫婦の結婚記念日でした。結婚式を挙げた日にしています。入籍した日にしている人もいるでしょうね。

 今年で29回目。夫についていろいろ書かせてもらっている(特に悪口)わりに、イベント的なことはとりあえずやるのが、私たち夫婦だ。と言っても晩ごはんのグレードを少し上げて、ワインを添えて、ケーキを食べる、だけ。料理はデパ地下任せで、家では作らないであろう小洒落た惣菜を見繕って各々ワンプレートに。ワインを飲むのは、結婚祝いにその年が入ったワイングラス頂いたので、なんとなく相応しい物かと。ケーキはお祝いっぽいから。ふたりとも栗好きなので、いつもモンブランだ。

 昨夜のの晩ごはんとしていろいろ食べたわけだが、食事中はいつも通りの黙食。コロナに始まったわけではなく、子どもたちが自立してから、パタリと会話が消えてしまったので。子どもたちがいたころも夫婦差し向かいの会話はもう何年もなかった。今さら何を話していいのか、話し始めはどうしたらいいのかわからない。たぶん夫も同じだと思う。

 それでもワインで乾杯といきたかったから、私はグラスを片手に「あ、おめでとうございます」と小声で言い、夫のグラスにコツンとさせるつもりで近づけた。が、スルーされた。本当に面白くないヤツだ。少しは合わせようと思わんのか。まあまあ、夫の性格を把握しているので、想定内だが。食事はデザートのケーキへ。2種類のモンブラン。見た目では分からない和栗とカナダ産で、どちらか選ばせた。夫は少し安いカナダを選んだ。心の中で笑う。

 29年間、紆余曲折いろいろあった。過去の絶望的な気持ちを踏みとどまらせてくれたのは、子どもたちの存在、そして愚痴を聞いてくれた親友の善意に他ならない。そして今は、夫の無言でも自主的な生活の手助けが、便利だなと思うようになった。私たちは会話は苦手になってしまったが、お互いを支えようという気持ちは持っていると思う。

 夫婦なんて、空気でいいの。ときどき「やっぱり、いてくれて良かった」と思う気持ちや出来事さえあれば、結婚生活は御の字だと思いませんか。
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