第47話 誕生日ランチ

文字数 845文字

 11月は上の子の誕生日があります。少し前、夫の提案でお祝いランチをすることになり、平日のお昼に3人で外食しました。下の子は関東に住んでいるので、こんなとき寂しく感じます。


 いつも申し上げている通り、我々夫婦の生活風景だけの話では、味も素っ気もない。ところが、ここに子どもが入ると、我々は途端にその姿を変える。

 夫の仕切りで始まったこの企画、夫からは日にちと家を出る時間だけしか教えてもらえなかった。愚痴は言わない。いつものことだ。慣れか?いやいや。夫はわりとセンスのいい店を探してくるので、任せっきりでも大丈夫だと思っているからだ。

 子どもは20代のアラサー。映える店に弱い。そんな条件を満たしてのことか、清潔感のあるブティックのような小洒落た店を予約していた。だが、店内の客にシニアらしい人たちもいた。(少し小洒落たシニア)我々はどうだったか?お邪魔になっていなければ幸いだが。今日は平日。週末ともなれば、お洒落な若者に気後れして入れないかもしれない店の雰囲気。

 メインの料理だけ決めて、あとはビュッフェ。ひと通り料理が並んだとき

「すみません。写真撮ってもらえませんか?」

と夫が店員さんに頼んだ。こういうことは外さない男。逆に私はその場の雰囲気に流されて、なあなあになってしまう過去がいく度か。夫のスマホでパシャリ!

 上の子はそろそろ中堅の域に入る。仕事の幅も広がりつつある中、どの方向に進みたいのかを上司から聞かれているらしい。その具体的な内容に夫は何も言わず耳を傾ける。私は、途中で口を挟む。夫の表情が一瞬、チッとなる。が、子どもも慣れたもの。私に応えて話を続ける。さすがは我々夫婦をよく知る者。不甲斐ない親を許しておくれ。

 ひと通り聞いた夫は、子どもの話の邪魔にならない、それでいて話題から()れない言葉で返す。饒舌に。父親としては100点。万能ではないことを残念に思う。

 撮った写真が、家族LINEで送られてきました。夫が一番笑顔でした。こんな顔もできるんだ……子はかすがいです。
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