第28話 今のうちランチ

文字数 899文字

 コロナ第6波を前に『今のうちランチ』のお誘いが目白押しです。有難き幸せなんですが、ご馳走を一度に詰め込むような感覚になっています。なんか贅沢でもったいないなと。あなたの周りは、どうですか?

 ワクチン効果なのか、日を追うごとに減っていくコロナ感染者。私はすごいぞワクチン!と賞賛したいが、専門家はその先にまた次の波が来ると言っている。ど素人の私も根拠はないが、そう思う。だから私の周りには『今のうち現象』が起きている。

 毎日のように、LINEが届く。コロナ全盛期のときは「私は友人たちから 取り残されてしまったか」とかなり悲観するほど。それなら、それで交友関係の断捨離だと息巻いていた時期もあった。だが、こうしてLINEで繋がり、ランチのお誘いがあるとホイホイOKの返事をする自分が滑稽で、弱いのに強がりなんだと気付かされる。

 一昨日は十年来の付き合いがあるグループでのランチだった。私を含め4人。多少年齢に差はあるが、立派な大人女子の面々。店は個室のある和食屋で、コロナからも他の客の視線からも離れてのひとときを過ごすことができた。

 そこそこいい値段のする料理だっが、惜しいことに印象が薄い。話に夢中になるあまり、食事に神経がいかなかった。とても残念だ。こんなことなら食事のグレードを下げても良かったなとセコイ私は思う。数日先も友人に会う予定がある。目的は食事よりも会話。気心知れた相手なので、居心地重視で店を探そうと思う。もちろん口に合わないジャンルの店は論外だが。

 立て続けに親しい人に会うと、自分の死期が迫っているんじゃないかと妙な考えが浮かぶ。以前台湾へ行ったときのこと。思いがけない場所で数年前に行けなかったドーナツ屋を見つけ、買いたかった翡翠の指輪の店へ運良くたどり着き、食べたかったグルメを堪能したときもそう思った。幸運の連続に戸惑う私。今、そんな気持ちにさせられるほどの外出予定が入っている。

 この2年で生活習慣が強制的に変えられましたよね。目に見えないウイルスによって。半世紀以上生きて、まさかこのような形で生活の変化を体験するとは……今でも、現実が信じられないときがあります。
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