第3話 母の病

文字数 855文字

 忘れないうちに書いておきたかったので、昨日に引き続き母の話です。今日もよろしくおつきあい願います。

 現在母が抱えている病は肝臓癌。コレはC型肝炎から肝硬変、そして肝臓癌へと形を変えてきたものだ。(さかのぼ)れば、病の始まりは30代後半に受けた子宮筋腫の手術ではないかと思われている。そのときに輸血された血液が原因ではなかったかと。ご存知のように肝臓は沈黙の臓器。体調に異変を感じたのは、それから20年くらい後のことだった。

 病気の疑いを持ったのは、上の子が幼稚園に入ったころ。行事があるたび、母に下の子を見てもらっていた。母は運転ができないため、2時間かかる道のりを電車を乗り継いで来てくれていた。外出先が少ない母にとって、私の家に来ることは楽しみの1つだったかもしれない。ある日、私が幼稚園から帰宅すると

「汗が吹き出てくる。疲れて昼寝しちゃった」

と言った。さほど暑い日だったわけでもないのに、やたらと出る汗。さすがにおかしいと受診。検査で肝炎がわかったが、時すでに遅く、直ぐに肝硬変へ移行した。そしてしばらく肝硬変が続く。母は同じ症状の人たちと病院で知り合い、病気の情報交換をしているようだったが、そのほとんどの人は既にこの世にいない。今となっては、母が最後の1人なのかもしれない。

 なぜ、母は生き延びることができているのか。それは、人一倍生きたいと願う気持ち。気持ちなんて生易しい言い方ではなく執念と言った方がいいかもしれない。以前聞いたことがある。

「何のために、長生きしたいの?」

この言葉だけだと酷い娘のように思われるかもしれないが、前振りはこうだ。

「もう、薬でお腹いっぱいになって、ご飯が食べられない」

「だったら、薬を減らしてもらって好きな物を食べた方がいいんじゃないの」と私。

に、薬は飲まなきゃ」

生きるが為。だから、それは何なの?何度も聞いたことがあったが、意味が分からなかった。母の生き延びたい理由とは……


すみません。今回はなかなかコンパクトにお伝えできないので、この続きは明日へ持ち越します。





ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み