第7章 第1話
文字数 2,541文字
あああーーーーーーーーー
行っちゃった。
でも。
楽しかった。うん。マジ神タイムだった。うん。
なんか一人でくっちゃべっていた気がするけど、こんだけゆっくりゆ−だいさんとお話ししたのは初めてかも。
ゴルフの話するとゆーだいさんの事だからメチャ心配してくれそーなんで、あえてゴルフの話はせんかった。
その代わり、アタシの話をいっぱいした。ゆーだいさんはアタシの二人の弟と会ったことないから、アイツらの話をいっぱいした。
下の弟の源次郎の話にちょっと食いついてたなあ。へっぽこだけど、一応中学まで野球部で四月からは大多慶商業入って野球部入るらしいから。
ウチの野球部は詳しくは知らんけど、ゆーだいさんはちょっと知ってたわ。何でも十数年前にプロ野球に行った凄え選手がいたとか。
「ちなみに、源次郎くんってポジションは?」
「んーー、お茶汲み?」
運転中にズッコケさせると命の危険に犯されることを、齢19にして初めて知る。
「お兄ちゃんの、えーと、大次郎くん? も大多慶商業なの?」
「それがさ。アイツ突然変異でさ、チョー頭良いんだわ」
「へえー。じゃあ別の高校に?」
「そ。県立の千葉一高行ってんだ」
「凄いじゃん! 俺でも知ってるよ、千葉の公立でダントツ一番じゃん!」
「誰に似たんだか。アタシはちょっと怪しいとにらんでんだけどさ、母ちゃんが誰か頭いい人と浮気したんじゃね? って」
「まーさーk…… いや… マジで、無いよな? そんなこと、ないよな?」
ウケる。マジゆーだいさんが青ざめてるし。
「うん。ねーし。あー見えて母ちゃん、実はいまだに父ちゃん一筋だし」
メチャホッとしてるゆーだいさんにキュンキュンする。
「そ、そっか。良かった。じゃあ大次郎くんは来年受験生かな?」
「だな。早くアタシが稼がねーと。大学行かしてやんねーと」
と当然の事を呟くとゆーだいさんはポツリと、
「俺、甘やかされてきたんだ、ってつくづく思うわ。学費も小遣いも全部親が出してくれたし。未だに実家暮らしだし」
「だーかーらー。同情するなら、金落とせっつーのぉ、大多慶市に、さ きゃは」
ゆーだいさんはすぐ自虐ネタに走るから。スポーツ選手だったのに、ちょっと暗いんだよなあ、でもそれが素敵! 好き!
そーんな今日のシンデレラタイムももうおしまい。てか。チゲーよ、アタしゃ戦いに来てんだっつーの。敵をぶっ潰しに来たんだっつーの。ふんっ。
サービスエリアでの電話からゆーだいさんの表情が固いんで、きっと彼女のチャラ子に色々言われてんだろーな、って想像し、暇そうな親友の春香に直電して聞いてみたら、
「チゲーねーから。早く帰してやんねーと、いつかみなみ刺されるで」
背筋に冷え汗が流れ落ち、試合終わったら久々のランチを約束して電話を切る。そんでゆーだいさんを急かしてとっとと今夜からの宿に送ってもらう。
ホントはね、もっとドライブしたかったな。それか、部屋に上がってもらいたかったな。んで、叶う事なら明日の朝まで一緒にいたかったな。そんで、許される事ならば金曜まで一緒に…
…アカン。あかん。秋には人夫になる男になんてことを…
車は無常(無情)にもホテルに到着してしまい、今のアタシが一番嫌いな時間となる。
ゆーだいさんも早く帰りたそーだし。グダグダワガママ言わずにサッと身を引こう。そんで明日からの戦闘モードに仮装(?)しなければ!
でも… やっぱ、やなものはヤダ。離れたくないよお、別れたくないよお、帰したくないよお… とリトルみなみが泣き叫ぶ。
時計を見ると9時半。じゃ、せめてあと30分、いいや15分…
アタシは首を振る。
これ以上、甘えちゃいかん。
アタシは戦に来たのだ。プロになる為にここに戦いにやってきたんだ。
ゆーだいさんの車のテールランプを眺めながらちょっと涙をこぼし、一つ大きく深呼吸してクルリと反転し、荷物を持ってホテルのエントランスに入っていく。
そー言えばホテルに泊まるなんて、修学旅行と家族でよく行くホテル三日月以来だ。一人で泊まるのはマジ初めてだ。
今まで泊まったホテルよりちょっとちゃちな感じがする。これがビジネスホテルってやつなんだろーな。荷物を持ってくれる人もいなく、フツーに鍵を受け取って自分で荷物を運んでく。それにしてもなんか狭いな。三日月はもっと天井も高くって廊下の幅も広かったかも。
でもぜいたく言っちゃいけねえ。あたしゃまだ研修生なんだし。プロになったらもっとすげーホテル泊まってやるだし。
五日分の重たい荷物を担ぎ、渡されたキーの部屋に入る。うん、大多慶の寮の部屋よかはるかにキレイじゃん! よーし、五日間がんばっか。
思ったより広い部屋の隅に荷物を下ろす。明日の練習ラウンドは朝8時20分スタート。お迎えのバスが7時にホテルフロント前。さて、とっとと風呂入って、寝るか…
… 風呂桶がねーから、シャワーだけ… 仕方ねえ、明日からはゴルフ場ででっけー風呂入ってくるか。
シャワーから出て明日の支度をして。さて、寝る前にアドレスの練習だけでもしとくかな。7番アイアン使って。
7番アイアン使って。
7番アイアン、使って… あれ…
ゴルフバック……
どーしよー、マジどーしよー…
完っ璧に、ゆーだいさんの車のトランクん中に置いてきちゃった…
すぐにゆーだいさんに連絡して、持ってきてもr…
いや。ダメ。今、11時。もう東京帰ってるかも、これから持ってきてもらったらメチャ遅くなっちゃう。
宅配便で送ってもらう? それだと明日の練習ラウンドはゴルフ場のレンタルクラブ使うしかない。最悪、明後日の初日も…
どーしょう。
持って来てもらう… でも遅くなり迷惑かけちゃう。
送ってもらう… 明日と明後日、ラウンドにならないかも。
他に方法、ないかなあ、ゆーだいさんに迷惑かからず自分のクラブをゲットする方法…
………
ダメだ、時間がどんどん過ぎていくだけ。このままじゃらちあかん。
時計を見る。12時近く。仕方ない。ゆーだいさんにトランクにアタシのゴルフバック置いて来ちゃったごめんなさい、と泣きのラインを送る。
ひょっとしたら朝まで既読つかないかも。
そしたら仕方ない。レンラルクラブで何とかするしか…
行っちゃった。
でも。
楽しかった。うん。マジ神タイムだった。うん。
なんか一人でくっちゃべっていた気がするけど、こんだけゆっくりゆ−だいさんとお話ししたのは初めてかも。
ゴルフの話するとゆーだいさんの事だからメチャ心配してくれそーなんで、あえてゴルフの話はせんかった。
その代わり、アタシの話をいっぱいした。ゆーだいさんはアタシの二人の弟と会ったことないから、アイツらの話をいっぱいした。
下の弟の源次郎の話にちょっと食いついてたなあ。へっぽこだけど、一応中学まで野球部で四月からは大多慶商業入って野球部入るらしいから。
ウチの野球部は詳しくは知らんけど、ゆーだいさんはちょっと知ってたわ。何でも十数年前にプロ野球に行った凄え選手がいたとか。
「ちなみに、源次郎くんってポジションは?」
「んーー、お茶汲み?」
運転中にズッコケさせると命の危険に犯されることを、齢19にして初めて知る。
「お兄ちゃんの、えーと、大次郎くん? も大多慶商業なの?」
「それがさ。アイツ突然変異でさ、チョー頭良いんだわ」
「へえー。じゃあ別の高校に?」
「そ。県立の千葉一高行ってんだ」
「凄いじゃん! 俺でも知ってるよ、千葉の公立でダントツ一番じゃん!」
「誰に似たんだか。アタシはちょっと怪しいとにらんでんだけどさ、母ちゃんが誰か頭いい人と浮気したんじゃね? って」
「まーさーk…… いや… マジで、無いよな? そんなこと、ないよな?」
ウケる。マジゆーだいさんが青ざめてるし。
「うん。ねーし。あー見えて母ちゃん、実はいまだに父ちゃん一筋だし」
メチャホッとしてるゆーだいさんにキュンキュンする。
「そ、そっか。良かった。じゃあ大次郎くんは来年受験生かな?」
「だな。早くアタシが稼がねーと。大学行かしてやんねーと」
と当然の事を呟くとゆーだいさんはポツリと、
「俺、甘やかされてきたんだ、ってつくづく思うわ。学費も小遣いも全部親が出してくれたし。未だに実家暮らしだし」
「だーかーらー。同情するなら、金落とせっつーのぉ、大多慶市に、さ きゃは」
ゆーだいさんはすぐ自虐ネタに走るから。スポーツ選手だったのに、ちょっと暗いんだよなあ、でもそれが素敵! 好き!
そーんな今日のシンデレラタイムももうおしまい。てか。チゲーよ、アタしゃ戦いに来てんだっつーの。敵をぶっ潰しに来たんだっつーの。ふんっ。
サービスエリアでの電話からゆーだいさんの表情が固いんで、きっと彼女のチャラ子に色々言われてんだろーな、って想像し、暇そうな親友の春香に直電して聞いてみたら、
「チゲーねーから。早く帰してやんねーと、いつかみなみ刺されるで」
背筋に冷え汗が流れ落ち、試合終わったら久々のランチを約束して電話を切る。そんでゆーだいさんを急かしてとっとと今夜からの宿に送ってもらう。
ホントはね、もっとドライブしたかったな。それか、部屋に上がってもらいたかったな。んで、叶う事なら明日の朝まで一緒にいたかったな。そんで、許される事ならば金曜まで一緒に…
…アカン。あかん。秋には人夫になる男になんてことを…
車は無常(無情)にもホテルに到着してしまい、今のアタシが一番嫌いな時間となる。
ゆーだいさんも早く帰りたそーだし。グダグダワガママ言わずにサッと身を引こう。そんで明日からの戦闘モードに仮装(?)しなければ!
でも… やっぱ、やなものはヤダ。離れたくないよお、別れたくないよお、帰したくないよお… とリトルみなみが泣き叫ぶ。
時計を見ると9時半。じゃ、せめてあと30分、いいや15分…
アタシは首を振る。
これ以上、甘えちゃいかん。
アタシは戦に来たのだ。プロになる為にここに戦いにやってきたんだ。
ゆーだいさんの車のテールランプを眺めながらちょっと涙をこぼし、一つ大きく深呼吸してクルリと反転し、荷物を持ってホテルのエントランスに入っていく。
そー言えばホテルに泊まるなんて、修学旅行と家族でよく行くホテル三日月以来だ。一人で泊まるのはマジ初めてだ。
今まで泊まったホテルよりちょっとちゃちな感じがする。これがビジネスホテルってやつなんだろーな。荷物を持ってくれる人もいなく、フツーに鍵を受け取って自分で荷物を運んでく。それにしてもなんか狭いな。三日月はもっと天井も高くって廊下の幅も広かったかも。
でもぜいたく言っちゃいけねえ。あたしゃまだ研修生なんだし。プロになったらもっとすげーホテル泊まってやるだし。
五日分の重たい荷物を担ぎ、渡されたキーの部屋に入る。うん、大多慶の寮の部屋よかはるかにキレイじゃん! よーし、五日間がんばっか。
思ったより広い部屋の隅に荷物を下ろす。明日の練習ラウンドは朝8時20分スタート。お迎えのバスが7時にホテルフロント前。さて、とっとと風呂入って、寝るか…
… 風呂桶がねーから、シャワーだけ… 仕方ねえ、明日からはゴルフ場ででっけー風呂入ってくるか。
シャワーから出て明日の支度をして。さて、寝る前にアドレスの練習だけでもしとくかな。7番アイアン使って。
7番アイアン使って。
7番アイアン、使って… あれ…
ゴルフバック……
どーしよー、マジどーしよー…
完っ璧に、ゆーだいさんの車のトランクん中に置いてきちゃった…
すぐにゆーだいさんに連絡して、持ってきてもr…
いや。ダメ。今、11時。もう東京帰ってるかも、これから持ってきてもらったらメチャ遅くなっちゃう。
宅配便で送ってもらう? それだと明日の練習ラウンドはゴルフ場のレンタルクラブ使うしかない。最悪、明後日の初日も…
どーしょう。
持って来てもらう… でも遅くなり迷惑かけちゃう。
送ってもらう… 明日と明後日、ラウンドにならないかも。
他に方法、ないかなあ、ゆーだいさんに迷惑かからず自分のクラブをゲットする方法…
………
ダメだ、時間がどんどん過ぎていくだけ。このままじゃらちあかん。
時計を見る。12時近く。仕方ない。ゆーだいさんにトランクにアタシのゴルフバック置いて来ちゃったごめんなさい、と泣きのラインを送る。
ひょっとしたら朝まで既読つかないかも。
そしたら仕方ない。レンラルクラブで何とかするしか…