第7章 第3話
文字数 2,155文字
また、迷惑かけちゃった…
どーしてアタシってこんなにドジなんだろ。こんなんじゃプロ失格だ。自分の道具の管理も出来ないなんて、絶対ダメ。
アタシ、ゆーだいさんを好きでいる権利、ない。
好きな人にこんなに迷惑かけちゃダメ。こんなに甘えちゃ、ダメ。
ゆーだいさんは明日の練習ラウンドに気を使って、もう寝てろって言ったけど。寝れる訳ないじゃん。急いで届けようとして事故ったらって考えたら、眠気なんて一ミリもおそってこないよ。
スマホの時計は1時半過ぎ。寝巻きから普段着に着替え、一階に降りてフロント前のソファーでスマホをいじくる。明日のコースの復習でも、と指を滑らすけど、全く頭に入ってこない。
車が一台到着して思わず立ち上がるが、赤い車だったのでソファーに沈み込む。中年の男女ペアがフロントでチェックインの手続きをしているのをボーッと眺める。
いいなあ。朝まで、一緒。
間違っても夫婦に見えねえその二人が、心からうらやましい。どんな関係であれ、好きな人と一緒に朝までいれる。チョーうらやましい。
寄り添うようにエレベーターに乗り込んでいく二人に、アタシは大きなため息が出てしまう。外に出よう。そう思いソファーから立ち上がり、エントランスに向かって歩き出す。
外は息が白いほど、寒い。明日のスタート時もこんくらい寒いのかなあ。両手をポッケに入れて、ホテルの入り口前の大通りに出てみる。
車通りはほとんどなく、たまーに大型トラックが白い煙を吹き出しながら通り過ぎるくらいだ。ゆーだいさん、疲れたろーなー。眠いだろーなー。スマホを見るともう1時45分だ。これから帰ったら、自宅にたどり着くの、一体何時になっちゃうんだろう。
あ。
そうだ。
いーこと、思いついた。
ピンときたアイデアを練り直そうとした時。
見慣れたヘッドライトの色が目に入る。やがて見慣れたシルエットの車が見えてくる。アタシは思わず車道に飛び出し、両手を振ってしまう。
よかった、無事に、来てくれた…
「ほんっっと、ゴメン!」
ゆーだいさんは車から降りてくるなり、土下座に近い角度で腰を曲げる。
「アタシこそっ すんませんっした!」
「いや。俺がちゃんと確認しなかったから。本当、申し訳ない!」
「ううん、アタシが大事な商売道具なのに忘れる方がダメ、もうプロ失格。」
「そんなことない! 俺があの時ボーッとしてたから…」
「アタシがあん時、ボーッとしていたから…」
二人の言葉が重なる。
ぷっ
二人して、吹き出す。
いいよね、ごめんね、もうがまんの限界っす。
思いっきり、ゆーだいさんの胸に飛び込んだ。そして両手を背中に回し、ギュッと、いやギュウーっと抱きしめる。
ゆーだいさんは一瞬凍り付くも、5秒後にはアタシの背中にそっと両手を回し、ムギュしてくれた。
「それでね、アタシ5時半に起きるんだ。だから、ゆーだいさんもそれまで寝て、帰りなよ」
さっきひらめいたアイデアを口にする。ほう、意外にすんなり言えたし。
「いやそれはできないよそれじゃみなみちゃんちゃんとねれないでしょう」
「今から帰ったらクタクタじゃん。ゆーだいさんも明日仕事でしょ? 寝れないじゃん」
「いやへいきへいきおれのことよりみなみちゃんのたいせつなれんしゅうラウンドが」
「ダメ。心配で寝れない! ゆーだいさんが無事に家に着くまで、心配で絶対寝ない」
「そそんなむちゃなほらきみのへやシングルでしょシングルベッドでしょふたりじゃむりでしょねるの」
「そんな歌、あったよねぇ、何とかなるって。あー、エッチな事考えてね? いやらすー」
「ないないないそんなことぜったしないってかんがえてないって」
「じゃあ、いーじゃん。朝まで、仮眠しなよ。それでゆーだいさんは会社に行く、アタシは練習ラウンドバッチリ頑張る。ね?」
一応ムダと思えるが、テヘペロも足してみる、とー
「そそうだななにがおこるわけでもないもんなだいじょうぶだよなあんしんだよな」
「やったあー あ、駐車場あっちみたいだよお」
よっしゃーーーーーーーーー
ゆーだいさんと、初お泊まりゲットオーーーー
それにしてもぉー
ゆーだいさん、メチャ分かりやすいわーー。
フロントの人に事情を話すと、
「本当はもう一名様の料金をいただきますが、そういった事情なら構いませんので、どうぞごゆっくりお休みください、あ、枕追加しましょうね、後でお部屋に届けますね」
メッチャいいホテルじゃん。安中で試合ある時は、死ぬまでここ使おっと。
それにしても…
男子と、お泊まり。
それも、大好きな人との…
かつてない緊張感が一緒に乗ったエレベーターの中で込み上げてきた。すげーな、延岡まゆ。この緊張感にヤツは打ち勝って数々の男を落としてきた、のか…
エレベーターがアタシの部屋のある四階に着く頃には、吐き気が込み上げてくる位だ。恐る恐るゆーだいさんを見ると、あれ? 心なしか、ゆーだいさん、顔が真っ白で何となく息が荒い…
まさかの、アタシほどではないにしても、キンチョーってヤツですか? メッチャ聞いてみたくなるが、男のプライドってえのもあるだろーから、聞くのをやめておく。
「ねえ、ゆーだいさん、キンチョーしてる?」
やっぱ、聞きくなってもうた〜 てへ。
ゆーだいさんは、ハッとした顔で〜
どーしてアタシってこんなにドジなんだろ。こんなんじゃプロ失格だ。自分の道具の管理も出来ないなんて、絶対ダメ。
アタシ、ゆーだいさんを好きでいる権利、ない。
好きな人にこんなに迷惑かけちゃダメ。こんなに甘えちゃ、ダメ。
ゆーだいさんは明日の練習ラウンドに気を使って、もう寝てろって言ったけど。寝れる訳ないじゃん。急いで届けようとして事故ったらって考えたら、眠気なんて一ミリもおそってこないよ。
スマホの時計は1時半過ぎ。寝巻きから普段着に着替え、一階に降りてフロント前のソファーでスマホをいじくる。明日のコースの復習でも、と指を滑らすけど、全く頭に入ってこない。
車が一台到着して思わず立ち上がるが、赤い車だったのでソファーに沈み込む。中年の男女ペアがフロントでチェックインの手続きをしているのをボーッと眺める。
いいなあ。朝まで、一緒。
間違っても夫婦に見えねえその二人が、心からうらやましい。どんな関係であれ、好きな人と一緒に朝までいれる。チョーうらやましい。
寄り添うようにエレベーターに乗り込んでいく二人に、アタシは大きなため息が出てしまう。外に出よう。そう思いソファーから立ち上がり、エントランスに向かって歩き出す。
外は息が白いほど、寒い。明日のスタート時もこんくらい寒いのかなあ。両手をポッケに入れて、ホテルの入り口前の大通りに出てみる。
車通りはほとんどなく、たまーに大型トラックが白い煙を吹き出しながら通り過ぎるくらいだ。ゆーだいさん、疲れたろーなー。眠いだろーなー。スマホを見るともう1時45分だ。これから帰ったら、自宅にたどり着くの、一体何時になっちゃうんだろう。
あ。
そうだ。
いーこと、思いついた。
ピンときたアイデアを練り直そうとした時。
見慣れたヘッドライトの色が目に入る。やがて見慣れたシルエットの車が見えてくる。アタシは思わず車道に飛び出し、両手を振ってしまう。
よかった、無事に、来てくれた…
「ほんっっと、ゴメン!」
ゆーだいさんは車から降りてくるなり、土下座に近い角度で腰を曲げる。
「アタシこそっ すんませんっした!」
「いや。俺がちゃんと確認しなかったから。本当、申し訳ない!」
「ううん、アタシが大事な商売道具なのに忘れる方がダメ、もうプロ失格。」
「そんなことない! 俺があの時ボーッとしてたから…」
「アタシがあん時、ボーッとしていたから…」
二人の言葉が重なる。
ぷっ
二人して、吹き出す。
いいよね、ごめんね、もうがまんの限界っす。
思いっきり、ゆーだいさんの胸に飛び込んだ。そして両手を背中に回し、ギュッと、いやギュウーっと抱きしめる。
ゆーだいさんは一瞬凍り付くも、5秒後にはアタシの背中にそっと両手を回し、ムギュしてくれた。
「それでね、アタシ5時半に起きるんだ。だから、ゆーだいさんもそれまで寝て、帰りなよ」
さっきひらめいたアイデアを口にする。ほう、意外にすんなり言えたし。
「いやそれはできないよそれじゃみなみちゃんちゃんとねれないでしょう」
「今から帰ったらクタクタじゃん。ゆーだいさんも明日仕事でしょ? 寝れないじゃん」
「いやへいきへいきおれのことよりみなみちゃんのたいせつなれんしゅうラウンドが」
「ダメ。心配で寝れない! ゆーだいさんが無事に家に着くまで、心配で絶対寝ない」
「そそんなむちゃなほらきみのへやシングルでしょシングルベッドでしょふたりじゃむりでしょねるの」
「そんな歌、あったよねぇ、何とかなるって。あー、エッチな事考えてね? いやらすー」
「ないないないそんなことぜったしないってかんがえてないって」
「じゃあ、いーじゃん。朝まで、仮眠しなよ。それでゆーだいさんは会社に行く、アタシは練習ラウンドバッチリ頑張る。ね?」
一応ムダと思えるが、テヘペロも足してみる、とー
「そそうだななにがおこるわけでもないもんなだいじょうぶだよなあんしんだよな」
「やったあー あ、駐車場あっちみたいだよお」
よっしゃーーーーーーーーー
ゆーだいさんと、初お泊まりゲットオーーーー
それにしてもぉー
ゆーだいさん、メチャ分かりやすいわーー。
フロントの人に事情を話すと、
「本当はもう一名様の料金をいただきますが、そういった事情なら構いませんので、どうぞごゆっくりお休みください、あ、枕追加しましょうね、後でお部屋に届けますね」
メッチャいいホテルじゃん。安中で試合ある時は、死ぬまでここ使おっと。
それにしても…
男子と、お泊まり。
それも、大好きな人との…
かつてない緊張感が一緒に乗ったエレベーターの中で込み上げてきた。すげーな、延岡まゆ。この緊張感にヤツは打ち勝って数々の男を落としてきた、のか…
エレベーターがアタシの部屋のある四階に着く頃には、吐き気が込み上げてくる位だ。恐る恐るゆーだいさんを見ると、あれ? 心なしか、ゆーだいさん、顔が真っ白で何となく息が荒い…
まさかの、アタシほどではないにしても、キンチョーってヤツですか? メッチャ聞いてみたくなるが、男のプライドってえのもあるだろーから、聞くのをやめておく。
「ねえ、ゆーだいさん、キンチョーしてる?」
やっぱ、聞きくなってもうた〜 てへ。
ゆーだいさんは、ハッとした顔で〜