第33話

文字数 329文字


「ほんとかよ」

 父の興奮が秒を追うごとに母に迫いついてきた。

 離れているが僕には父の興奮だって母と同じように身近に感じられた。

 僕たちが肉体ではないところで繋がっていることはその結合体である僕自身が一番理解している。

 面白いもので、母と父の肉体が交わってできた僕が、彼らと個々同体意識で繋がっていて、

 僕を産む母と注いだ父は互いを愛情以外で繋ぐものはない。

 つまり、僕がここでは全知なのだ。

「99%だって」

 それが例え真偽定かならざる仮想空間の怪しい情報であっても、

 母と父には正確な数値に違いない。

 待ちわびた我が子の誕生を判定するものに、何をか云わんや、

 二人に疑いを挟む余地があろうか。

 この記念すべき日から、僕たち三人の暮らしが始まったと云ってよい。
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