第70話

文字数 307文字

 どちらの側の(けが)らわしいものから糾弾すべきか、母は懊悩(おうのう)した。

 生活を共にする夫か、はたまた血を分けた妹か。

 近しいこの者たちがどんなにうまい云い訳しようともどんな尤もらしい理由を付けようとも、どちらも幾分たりとも許せはしない。

 どちらも自分に(ひざまづ)かせてありったけの謝罪を吐かせたい。

 その謝罪を自分はひとつとして決して受け入れない。

 それでも(すが)り付く両名を足蹴にして謝罪の次に後悔の言葉を地平線の先まで並べさせて擦り切れた後悔を自分は断固として受け入れない。

 泣き(すが)ろうとも(わめ)き狂おうとも自分は二人を許さない。

 絶望に伏した二人が共に自分の前から立ち去って身を投げようが入水(じゅすい)しようが、どちらかを助けたいとも思わない。
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