第51話

文字数 345文字

 本日二度目の診察を終えたのは、一度目が終わってから二時間が過ぎていた。

 ここにまたもう一人僕を案じてくれる人がいる。

 僕の父はあまりに母からの伝言が来ないので、堪りかねて彼から伝言を寄越してきた。

「どうだったの?」

 それ以上の言葉は添えていないが、父がそれを恐る恐る送っていたことを僕はわかっている。

「まさかだめだったのかよ?」

 そんな信じたくもない呟きがここには混じっている。

 父の探りを母が目にしたのは二度目の診察後、待合室で支払いを終えたあとだった。

 母は思い出したようにさっき作りかけていた(一時は文字の羅列に成り下がった)伝言を呼び起こした。

 そして要らない飾りは全て消して父にこう送った。

「予定日9月20日」

 僕が娑婆に出られる日が二人の間で認識された(むし)ろ今日が記念日である。
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