第38話

文字数 435文字


 勿体つけた言い方を彼が好んで使っているのではなさそうだが、母には判然としなかった。

「赤ちゃんができた時にね、お母さんとお父さんが持っている染色体、つまり型ですね、それが結合した時に、もうどちらの性別か決まっているんですよ。お母さんはXという型、お父さんはXとYの2つの型を持っているんです。お母さんのXとお父さんのXがくっ付いたら女の子、お母さんのXとお父さんのYがくっ付いたら男の子、とまあこうなるわけです。だから、既にどの型になっているかは決まっているんですけどね、僕らが持っているもの(機械)では残念ながらわかりませんし・・・」

 医師の表情にはわからなくていいといった自然な笑みがあった。

 だから母は不安を塗り潰して、

「そうなんですね」と無理にも呟く。

 けれど、僕には既にわかっているし、医師に代わって母に教えてあげたいのだが、

 その必要性を感じなくなる母との疎通の方を僕は大事にしたい。

 それにいまにわかることだから。

 きっと医師もそう云いたかったに違いない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み